みなさんこんにちは。前回は元人事として、日頃の交渉ごとにも使える「面接の極意」をお伝えしました。その中で、コミュニケーションの第1歩は「相手の聞きたいこと、知りたいことを掴む」ことであり、「面接の極意はここに尽きる」とお伝えしました。
ただ面接は、限られた時間の中でこちらが聞きたいことを話してもらいたいものです。そこで今回は、面接で初対面の相手から、こちらが「聞きたいこと」をどう引き出すのか。私が人事で数多くの面接をしてきた経験をもとに、お伝えしていきます。
もちろん面接に限らず、たとえばクライアントとの交渉の場面などでも「限られた時間の中で聞き出さなければならない」ことはよくあること。その際にも、ぜひ参考にしていただければと思います。
面接の場で相手の話を引き出す、3つのポイント
「相手の話を引き出す」ときに求められるのが、いわゆる「質問力」です。「質問力」についてはさまざまな書籍やWebサイトなどで紹介されていますが、ここでは私の経験から面接する上での3つのポイントをご紹介していきます。
①まず相手の緊張をほぐす質問を
「面接官から何を聞かれるんだろう?」
「うまく答えられなかったらどうしよう?」
転職希望者にとって、面接の直前は誰でも緊張するものです。中にはあまりにも緊張しすぎてしまい、こちらの質問に満足に答えられない、という人もいます。そこで私は、緊張をほぐしてもらうために、最初の挨拶のときにまず面接とは関係のない質問に答えてもらい、その後に「オチ」をつけ、「ひと笑い」してもらうようにしていました。
たとえば「今日は暑いですね。駅から当社にいらっしゃる間はたいへんでしたよね?」とお聞きして何かしら答えていただき、その後に「そうですか、私は毎朝汗でびしょ濡れで出社するので、同僚から『朝からプールに行ってきたのか?』って言われるんですよ」などと話し、相手の笑いを誘うようにしていました。
ここで大切なのが、質問に答えてもらったら、すぐにこちらから再び返すこと。質問に答えてもらっただけで会話が終わってしまうと、はじめから面接の場に「噛み合ってない感」が出てしまい、その後もぎくしゃくした場になってしまいます。最初の質問に答えてもらったら、その答えに合わせて必ずひとこと返して言葉のキャッチボールを行う。そして大ウケでなくても「クスッ」くらいでいいので、相手の緊張感が解けるような会話を心がけていました。
②質問の仕方や順番を工夫して、徐々に引き出す
転職希望者は、採用してもらうために少しでも自分をアピールしたい、と思っています。人によっては聞かれていないことも話してしまうので、その結果、話が長くなりがちです。
一方、採用面接をする人事としては、転職理由やこれまで培ってきた仕事経験・専門性、今後のキャリアプランなど、採用面接の短い時間の中で聞きたいことがたくさんあります。なので、できるだけこちらからの質問に簡潔に答えてほしいと思っています。
そこで、私は面接の際、はじめのうちは「現在は大手企業に向けた企画提案営業をされていますよね?」「現在の会社に入社されてからずっと営業職と聞いていますが、それはご自身の希望ですか?」など、なるべく事実ベースで「Yes」「No」で簡潔に答えられるような質問を投げかけていました。
すると転職希望者は質問にテンポよく答えているうちに緊張感がほぐれ、次第に自分の言葉で話してくれるようになります。その状況を見て「今までの経験から、あなたが提案営業で最も大切にしてきたことは何ですか?」などと質問し、転職希望者の考えを引き出すようにしていました。
③相手が「待っている」質問は最後にする
先ほどもお話ししたように、転職希望者は面接の場で自分をアピールして認めてもらいたい、採用面接に合格したい、と思っているため、自己アピールの話になると長くなりがちです。
ただ、話したいことがわかっているのに何も聞かないのも、転職希望者にとってはストレスが溜まってしまい、消化不良で面接が終わってしまいます。
そこで私は、面接の最後に「残り5分くらいあるので、他に何かお聞きになりたいことはありますか?」と問いかけ、質問や自己アピールを伺うようにしていました。
こうすることで「相手の話が長くて、聞きたいことが聞けなかった」という事態を防ぎ、限られた面接の時間をうまく使うことができました。
質問で、コミュニケーションをリードしよう
「質問」は、相手を強制的に特定の方向で考えさせる力を持っています。
特に「面接」という場は、基本的に面接官が質問し、転職希望者が答えます。質問を工夫し上手に投げかけることで、相手から考えを引き出したり、相手の考えを思う方向にリードできたりすることができます。
そしてこれは、面接の場に限らず、日頃の仕事の中でも応用可能です。はじめてのクライアントに話を聞く際や、商談を優位に進めたい時など、うまく質問の組み立てを考え投げかけることで、会話をリードすることができるのです。
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