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事業譲渡での契約書について解説! 契約書作成における注意点やひな形について

事業譲渡での契約書について解説! 契約書作成における注意点やひな形について

事業譲渡契約書(以下、契約書)とは、一事業や事業の一部を譲渡する際に用いる書類で、譲渡会社(以下、売り手)と譲受会社(以下、買い手)双方の合意内容を明らかにすることを目的として作成されます。

今回は契約書を作成する際の注意点を簡潔に説明します。要点を押さえて契約書の作成内容にもれのないように進めていきましょう。

事業譲渡における契約書の注意点

契約書に明記される項目は、譲渡対象の事業や資産の特定だけではなく、譲渡手続きに関する事項、従業員がいる場合は引き継ぎ事項など広範囲になります。契約書作成の際、注意すべき点はいくつかありますが、特に下記の4点について解説します。

1.譲渡対象財産
事業譲渡においては、株式譲渡とは異なり、譲渡の対象を当事者間で自由に決めることができます。そのため承継対象となる資産や負債をひとつひとつ特定することが必要で、特に譲渡財産が多い場合は、別紙で資産目録を作り契約書に添付するなどして明記します。
ウェブサイトなどの著作物を譲渡する場合、注意しなければならないのは、サイト記事やHPのデザインなどの公表や氏名表示など、制作者の諸権利を守る目的がある「著作者人格権」は譲渡不可であることです。そこで、著作物を譲渡する場合は、売り手が買い手に対して著作者人格権を行使しない旨の特約を明記することが一般的です。

2.従業員の転籍
買い手側が売り手側に在籍していた従業員の雇用を引き継ぐ場合には、買い手側と雇用契約の再締結が必要です。
契約書には「譲渡日に解雇及び雇用契約の再締結を行うこと」「売り手側が期日までに従業員から再雇用の承認を得ること」を明記します。
雇用条件は「売り手側で締結していた条件を継続する」のか「買い手側の条件が適用になるのか」を決める必要があり、この内容も契約書の記載事項となります。
また、買い手側は、雇用条件だけではなく、売り手側の従業員に対する未払い債務(退職金・賞与など)や、有給の未消化分、勤続年数など、権利を引き継ぐか否かを検討し、契約書に加筆します。

3.競業避止義務
競業避止義務とは、事業譲渡の例だと買い手が不利益を被ることを避けるため、売り手が買い手と同様の事業を行うことを制限する行為です。法律上は(会社法21条)、売り手が買い手と同じ市町村内及び隣接する市町村内において、譲渡したものと同じ事業を行うことが20年間禁止されますが、禁止の有無や禁止期間の設定(ただし譲渡日から30年以内)、就業不可の地域、同業事業に加え類似事業も禁止するなど、当事者間で独自に決めることも可能で、決定事項は契約書に明記します。

参考:e-Gov「会社法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086

4.商号続用時の免責登記
商号の続用とは、買い手が売り手の商号を引き継ぐことであり、一般的な解釈では売り手の債務も引き継がれたと判断されます。しかし、買い手が本店所在地において売り手の債務を弁済する責任を負わない旨の登記をした場合には、債務の負担をしないとされています。買い手が免責登記を希望する場合は、契約書に免責登記事項を加える必要があります。

事業譲渡契約書のひな形について

書籍やウェブサイトなどから契約書のひな形を入手し利用する場合、注意することがあります。それは、売り手と買い手双方で交わす契約書の内容は100%ひな形と同じではないことです。ひな形を参考にするのはかまいませんが、そのまま利用するのではなく、契約内容に合わせて各自で追加・削除することになります。さらに、1つの項目に多くの記載事項がある場合は、わかりやすくするために目録を作成することも必要でしょう。また、契約書はその内容にもれや不都合がないようにすることが大切です。万一不備があった場合はトラブルに発展する恐れがあるため、リスクヘッジの観点から作成後、専門家などに確認してもらうと安心です。

事業譲渡契約書の印紙税について

事業譲渡の契約は、譲渡金額が1万円未満であるものを除き、印紙税の課税対象となります。そのため契約書に記載された取引額に応じた印紙税を支払わなくてはなりません。(印紙税の額はウェブサイトなどで確認できます)印紙税は、税相当額の収入印紙を契約書に貼り付けることによって納付します。もし印紙税を納めなかった場合、過怠税が課せられますので注意しましょう。

参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm

まとめ

契約書を作成する前に、まずしておくことは事業譲渡の詳細についてきっちりと把握することです。具体的には、売り手と買い手の条件項目を上げてリスト化しましょう。各事項について内容が理にかなったものかどうかを確認することで、一方的な不利益や双方の食い違いを避けることができます。判断がつかない場合、事業譲渡の話があった段階で専門家に相談し、アドバイスを受けるのも一つの方法です。

PROFILE

FP・社会保険労務士 木村政美

2004年に、行政書士・社会保険労務士・FP事務所の「きむらオフィス」を開業。2017年より、ダイヤモンドオンラインにてコラム連載を持つ。年金や個人のマネープランの相談・講習、企業向けのメンタルヘルス研修など幅広い分野で活動している。

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