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気をつけるべき会社分割による適格要件と非適格要件

気をつけるべき会社分割による適格要件と非適格要件

会社分割とは、組織再編行為の1つで、会社内事業の権利義務関係を自社から切り離し、他社に承継させることです。

会社分割をして、ある事業を独立させたり、さらにその株式を売却したりするなどの目的などがあります。

会社分割は大きく分けて2種類ある

会社分割には、新設分割と吸収分割の2種類あります。

新設分割
新会社を設立して、会社の全部または一部の事業を新設会社に引き継がせる方法です。

例えば、複数の事業をおこなう会社が、特定の事業部門を分社化する、あるいは、すべての事業を分社化して分割会社自身は持株会社となる、などのケースがあります。

吸収分割
会社から分割した事業をほかの既存の会社に承継させる手法です。

吸収分割は、会社の全部または一部の事業を他社に引き継がせる方法で、グループ内の組織再編にも使われます。

第三者への事業の譲渡や資本提携など、M&Aの手段としてよく利用される方法です。

適格要件を満たす条件

この会社分割には“適格要件”と“非適格要件”があります。

節税効果のある要件を適切に満たしているということを適格と呼び、適格要件を満たせば節税効果が見込めるのです。

分割する事業の価値が分割する事業の資産負債の差額よりも大きい場合、譲渡益が発生し、その譲渡益に法人税が課税されますが、会社分割が適格要件を満たしている場合、譲渡損益は繰り延べられます。

会社分割をおこなう会社と分割承継する会社との間で“支配関係が継続しているか”が会社分割の大きな適格要件です。

具体的には、“分割承継する会社”の“分割承継される会社”に対する関係が以下の3つの場合で異なります。

・支配率が100%の場合
・支配率が50%超~100%未満の場合
・支配率が50%未満で、支配関係がない会社との共同事業の場合

適格要件は支配関係が弱いほど、満たすべき要件が増えます。

1.支配率が100%の場合
分割承継の対価として「分割承継する会社、もしくはその会社分割をおこなう会社の株式“以外”の資産」が「分割承継される会社、もしくはその会社の株主」に交付されていない、という点が要件です。

2.支配率が50%超~100%未満の場合
支配率が100%の場合にある「株式の交付に関する項目」に以下の適格要件が追加されます。

・分割される事業に関する主要資産および負債が、分割承継する会社に移転されていること。
・分割される事業に関わっている従業員のうち、総数の約80%以上の従業員が分割後もその事業に従事することが決定されていること。
・分割される事業が、分割後も継続して分割承継する会社で営業を継続していること。

3.支配率が50%未満で支配関係がない会社との共同事業の場合
この場合の適格要件は以下のとおりです。

・“分割される事業”と“分割承継する会社でおこなわれていた事業”との間に関連性があること。
・“分割される事業”と“分割承継する会社でおこなわれていた事業”の、それぞれの売上の金額、従業員の数、あるいはそれらに準ずるものの規模の割合が50%を超えていないこと。
・“分割承継される会社”と“分割承継する会社”の特定役員のうちの誰かが、分割後に“分割承継する会社”の特定役員になると見込まれていること。

※特定役員:社長や副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役、あるいはこれらに準ずる会社の経営に従事している役員

上記の適格要件のいずれかを満たしていなければ非適格要件に該当します。

適格要件を満たした場合のメリット

適格要件を満たすメリットは、ずばり課税対象外になるという点です。

また、会社分割は株主総会で承認を受けなければなりませんが、会社分割が適格要件を満たしていれば株主は賛同しやすくなります。

組織再編・グループ再編に適している手法といえるでしょう。

適格要件を満たした場合のデメリット

会社分割の際に、株式を対価として支払えるということは、現金を用意しなくてもいいメリットもありますが、デメリットもあるので注意が必要です。

例えば、会社分割をおこなう会社の株式が非上場株式であれば、その株価を計算する必要があります。

その株価の計算による手間は決して少なくはなくデメリットと言えるでしょう。

まとめ

会社分割を検討する場合、適格要件を満たすこと節税の面でも大きなメリットとなります。

したがって、分割後の支配関係もよく検討した上で会社分割を進めることが重要です。

会社分割は複雑なスキームになることも多いため、実際に検討する場合はぜひ会計事務所にご相談されることをおすすめします。

PROFILE

公認会計士・税理士 佐久間 将司

慶応義塾大学卒業。
1995年10月、監査法人トーマツ入所。国際部門にて監査業務等に従事。
その後、デリバティブ等に関する税務コンサルティング、M&Aアドバイザリー、 デューデリジェンスなど幅広い業務に従事。
2009年3月よりEMZグループ代表に就任。
EMZグループは、会計・税務・労務・登記等をワンストップで提供する総合アドバイザリーグループであり、国内で会計や財務の面でのサポートを行うほかに、企業の海外進出を支援。
2012年には、香港に子会社を立ち上げ、中小企業の経営者が海外に進出する際に直面する障壁を少しでも取り払い、事業の進展をサポートしている。

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