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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第58回・消費税が10%になったら

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第58回・消費税が10%になったら

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

2019年10月から消費税が現在の8%から10%に上がることになりそうです。増税ですから支払う値段が上がるわけですが、実は10%に増税されてから買った方が「お得になるのではないか」といわれるものがあります。さて、それは何でしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

先日の参院選の結果を受けて、消費税はほぼ間違いなく10%に増税されそうです。

増税というのは消費を左右するだけに、商売をしている人としては非常に大きなイベントの1つです。しかし、基本的にはビジネスにとってマイナスのインパクトをもたらすことが多いでしょう。

今回は、消費税が5%から8%に上がった2014年のケースを参考に、「今回の増税で考えられるトピックス」を3つ挙げておきたいと思います。

それでは解説します!

1つ目は、「駆け込み需要」です。消費税が上がる前に必要なものを買い込んでおこう、という動きが活発になります。増税前の8月や9月から、その流れが加速すると思われます。

中でも、前回の駆け込み需要で話題になったのが「お酒」と「タバコ」でした。嗜好品で保存がきくからとまとめ買いしておく人が非常に多かったようです。

もちろん日用品は全般が当てはまりますが、比較的、値上がりを実感しやすい高額なものの方が駆け込みで売れるでしょう。実際にちょっと値段の張る電化製品などもよく売れたようです。

駆け込み需要に対しての商売をする側の心得としては、兎にも角にも「欠品をしないように準備しておく」のが基本でしょう。前もって仕入れや製造を調整するなど、備えておくことが大事です。

また、ものによっては「納品をもってして購入」となる場合があります。その場合は9月中に納品しなくてはいけなくなります。例えば自動車がそうですし、一部のオーダーメイドの商品などはそれに当てはまります。扱う商品によっては、顧客のニーズに合わせて納品できる体制を整えておく必要がありそうです。

ちなみに、増税後に買った方がお得になるといわれている商品があります。それが「住宅」です。もちろん消費税の分だけ値段は高くなりますが、購入後の住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)によって、増税分とほぼ同じ金額が最終的に所得税から還付されることになります。

その一方で、前回の増税のときにも同じ現象が起きましたが、増税後は必ず住宅相場が下がります。不動産が売れなくなるからです。今回の場合、東京オリンピック後に選手村が大量に販売に出されますから、相場下落はかなり高い確率で見込まれるでしょう。だとすれば住宅は増税後のほうがずっとお得という考え方があるのです。

これは前回の増税の際にも話題になった話です。あくまで未来予測の話ではありますが、住宅の購入を考えている方は、購入時期について改めて検討してみてもいいかもしれませんね。

増税後に落ち込む消費をどう盛り上げるか

2つ目は、「増税後の施策」の話です。

例えば、よくあるのは「増税分だけ還元する」と言ったサービスや、新たにポイントや地域振興券のような金券を配布したりする施策です。増税後に消費が落ち込む分をフォローするために、あらゆることを考えておく必要があるということです。

最近だと「○○Pay」のようなものがたくさんありますが、おそらくこうしたサービスごとにあらゆる施策を行うでしょう。それに対応できるよう事前に手を打っておくなど、準備が必要かもしれません。

3つ目が「経過措置制度の活用」です。簡単にいうと、「コーヒー回数券」のように増税後も差額なしで使えるチケットやクーポンなどを増税前に販売しておく、というようなキャンペーンの企画が当てはまります。

経過措置制度とは、税率変更の前後にまたがる取り引きについてどちらの税率を適応するかを決めたもので、例えば回数券や年間パスポート、年間シート、旅客運賃や請負工事のようなものは、増税後も一定期間は前の税率を引き継げるのです。

ですから、お得な回数券のようなものを8%で販売しておけば、駆け込み需要のお客にも訴求でき、なおかつ増税後の施策にもつなげることができるわけです。

「冬物のバーゲン」を夏にやる!?

消費税増税の一番のポイントは、「増税前にいろいろ買っておきたい」という心理が働くことでしょう。

であれば、例えば増税後に買うであろう「冬物」のバーゲンを8月や9月に開催するなんていうアイデアも面白いかもしれません。おそらくできることはたくさんあると思いますので、増税をあえてチャンスと捉えて、いろいろ試してみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「住宅」でした。消費税が10%だと買い物をする際の消費税の計算が非常に楽になりますよね。8%の時は計算がしにくかった分、レジで「意外と高いな」なんて思ったりしたことがあったのではないでしょうか。その辺の心理的な要素が増税後の消費にどう影響するのかは、チェックしていきたいと思っています。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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