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事業承継で使える事業承継税制・補助金と、事業承継の進め方

先祖代々、事業を継続してきた老舗企業であっても後継者が見つからないまま、経営者の高齢化が進み存続の危機に立たされている企業は少なくありません。国も本格的に事業承継対策に乗り出し、事業承継問題の認知は進んできていますが、円滑に事業承継を進めるために具体的にはどうすればよいのでしょうか。また、どのような支援が国から受けられるのでしょうか。

事業承継とは

事業承継とは、事業を後継者に引き継ぐことです。後継者に事業を引き継ぐということは、具体的には経営権と株式を中心とした資産を引き継ぐことを意味します。会社の資産価値は基本的に株価に反映されますが、実体としては現経営者名義の土地や、現経営者が会社に貸し付けていたりすることもあり、そういった資産の全般的な整理が必要となります。
また、引き継ぐものは金融資産だけでなく地域社会や取引先との関係、ブランドといった知的資産、従業員などの人的資産も含まれています。これらの価値を見える化することで承継後も会社として成長・発展していけるように配慮し、引き継ぐことが重要です。

1.経営者の高齢化
帝国データバンクの2019年1月の発表によると、全国の社長の平均年齢は59.7歳となり、過去最高を更新しました(※1)。また、中小企業に限ってみても、最も多い経営者の年齢が1995年には47歳であったのが2018年には69歳へと大幅に上昇しています。(※2)これらのことから、経営の担い手の高齢化が急速に進んでいることがわかります。
※1:帝国データバンク「全国社長年齢分析(2019年)」
※2:中小企業庁「第2部 経営者の世代交代」『2019年版 中小企業白書』

2.企業の3分の2は後継者が決まっていない
経営者の高齢化が進んでいるにもかかわらず、近年では後継者不足が大きな問題となっています。帝国データバンクの調査によれば、日本の企業における後継者不在率は66.4%です。実に、企業の約3分の2が現在も後継者が決まっていないことになります。企業が1社廃業すると、従業員、取引先や地域経済に少なからず影響を及ぼすことが予想されるため、事業を継続させるために後継者の決定と継承が急務となっています。
(参考:帝国データバンク「特別企画:全国『後継者不在企業』動向調査(2018 年)」)

3.承継先は親族内から親族外へ
昔は、事業承継は家督相続と同義であり、事業は長男が継ぐもの、もしくは養子を迎えることによって事業承継されるものという認識が一般的で、事業承継は否応なく進められてきました。
しかしながら、近年では相続税制の改変、家長の相対的な地位低下、職業選択は個人の自由といった風潮が強まり、子息が後を継がないという選択肢も増えてきました。こういった環境変化の中、事業承継について悩む経営者も少なくありません。また、事業承継時には現経営者が個人で行っている債務保証も後継者が引き継ぐため、母親が事業承継に反対するといったことも起こっています。
このような様々な事情から後継者がなかなか決まらない企業が増えています。また、優秀な社員に引き継いでもらいたいと思っても、株を買う資金がなかったり、血縁関係のない社員自身が債務保証を引き継ぐことに抵抗感を持つこともあります。そこで、事業継続を断念し廃業に踏み切るケースも多いのです。
一方、親族や、社内ではなく、M&Aといった形で、第三者に事業継承することへの心理的抵抗感は薄れており、M&Aを選ぶ企業も近年増えています。

事業承継の3つの方法

簡単にまとめますと、事業承継には、親族内事業承継・親族外事業承継・社外への引き継ぎ(第三者承継)の3つの方法があります。それぞれの内容やメリット、デメリットについて見ていきましょう。

1.親族内事業承継
親族内事業承継とは、子どもや配偶者、婿・嫁、甥・姪など親族に事業を継ぐ方法です。社内外から理解が得られやすいこと、早期に後継者教育を始められるメリットがあります。
一方、後継者に経営者としての資質や能力を持つ者がいるとは限らないこと、後継者以外に相続人が複数いる場合、後継者の決定や経営権を集中させることが難しいというデメリットがあります。

2.親族外事業承継
親族外事業承継とは、親族以外の従業員や役員に事業を継がせる方法です。後継者候補の選択肢の幅が広がることや、業務に精通しているため後継者教育にかける時間が短縮できることがメリットです。
しかし、現社長の代わりができるほど経営を俯瞰的に見るセンスがある役員、社員はなかなか存在せず、いたとしても会社債務の個人保証引き継ぎや株式取得のための資金力が不足している場合が多いことなどが、デメリットと言えます。

3.社外への引き継ぎ(第三者承継)
社外への引き継ぎとは、ほかの企業など社外に事業を引き継ぐ方法です。後継者がいなくても事業が存続できるので雇用を守れること、売却先とのシナジーにより事業拡大が期待できること、現経営者が売却益を享受できることなどがメリットです。
一方、希望条件に合う買い手が見つかるとは限らないこと、優秀な従業員が辞めてしまう可能性があること、事業譲渡後は経営に口が出せなくなること、また、事業譲渡後に譲渡を嫌気した主要取引先との取引停止になるリスクがあることなどがデメリットです。

事業承継の5つのステップ

実際に事業承継を行うには、5つのステップを踏むことになります。進め方は、親族内承継・親族外承継と社外への引き継ぎで、同一の部分と異なる部分があります。具体的にどのような手順を踏むのでしょうか。

ステップ1.事業承継に向けた準備の必要性の認識
まず、経営者自身が事業承継を行うことを決意するところから始まります。実際に後継者に事業を承継し、後継者が独り立ちするまでには非常に長い時間がかかります。事業資産や経営資源などの承継も計画的に行うことが必要です。そのため、少なくとも引退を考えている年の5~10年前から準備を始めましょう。

ステップ2.経営状況・経営課題の「見える化」
経営状況や経営課題を全て洗い出すことが大切です。事業の将来性や経営体質、経営資源、財務状況を「見える化」することで、今後取り組むべき経営課題が見えたり、銀行や取引先からの信用度をアップさせたりすることにもつながります。後継者にとっても、現在の経営状態がクリアになることで不安なく事業承継に臨めるようになるでしょう。

ステップ3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
課題が見えたら、それを一つ一つ改善して、経営の磨き上げを行いましょう。会社の持つ「強み」を前面に押し出して業容拡大を図りながら、社員各々の役割やミッションを明確にして効率的な組織体制づくりを目指します。

ステップ4.事業承継計画の策定 (親族内・外承継)/ マッチングの実施(第三者承継)
ここから、親族内承継・親族外承継(従業員承継)の場合と社外への引き継ぎ(第三者承継)の場合で、進め方が分かれます。
親族内承継・親族外承継の場合は、事業承継計画の策定を行います。これまでを振り返って経営理念や経営者の想いを再確認しましょう。その上で、具体的な事業承継の方針やスケジュールについて計画を立てます。事業承継には5~10年の年月がかかりますので、少なくとも10年後を見据えて策定しなくてはなりません。
社外への事業の引き継ぎの場合はM&A仲介業者などに依頼し、買い手とのマッチングを行います。事前に事業の「磨き上げ」をして企業価値を高めておくと、より良い条件でマッチングできる可能性も高くなるでしょう。

ステップ5.事業承継/M&Aの実行
現経営者から後継者もしくは売却先へ、株式などの資産の移転や権限委譲を行います。実行が完了してもそこで事業承継が終わるわけではありません。第一線を退いても、何かあったときには、元経営者としてアドバイスやサポートを適宜行う必要もあるでしょう。

使いやすくなった事業承継税制

事業承継では、企業規模が大きいほど受け継がれる資産も多くなるので、後継者は相続税や贈与税の支払いが多くなります。そこで、事業承継にかかる税負担を軽減するために用意されているのが、事業承継税制です。

1.贈与税・相続税の免除・猶予
事業承継税制とは、相続や贈与により取得した財産について、後継者が事業承継することを条件に相続税や贈与税の支払いを猶予する制度です。平成29年度および平成30年度の事業承継税制改正により、適用要件が緩和され、特に中小零細企業にとっては利用しやすくなりました。
ただし、2023年3月31日までに特例承継計画を策定し、2027年12月31日までに実際に承継を行うことが条件となっているので留意しましょう。

2.適用要件
事業承継税制を適用するための要件は以下の通りです。


(参考:中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」p.32)

3.申請手続きの流れ
(1)会社側が特例承継計画を策定し、商工会、商工会議所、金融機関、税理士などの認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)が所見を記載した上で主たる事業所の所在地を管轄する都道府県庁に提出します(2023年3月31日まで)。
(2)贈与の場合は、贈与年の10月15日~翌年1月15日までに申請します。相続の場合は、相続開始の日の翌日から8カ月以内に申請します。どちらも特例承継計画の添付が必要です。
(3)認定書の写しとともに、贈与税もしくは相続税の申告書等を税務署に提出します。
(4)申告期限後5年間は、都道府県庁へ「年次報告書」を、税務署へ「継続届出書」を年に1回それぞれ提出します。
(5)5年経過後は、実績報告を提出します。雇用が5年間平均して8割を下回った場合は、その理由を明記し、認定支援機関が確認します。理由が経営状況の悪化などである場合には、認定支援機関から指導・助言を受けます。
(6)6年目以降は税務署へ継続届出書を3年に1回提出します。
(参考:経済産業省「-経営承継円滑化法-申請マニュアル【相続税、贈与税の納税猶予制度の特例】2019年4月施行」p.5-6)

資金調達のための金融支援

事業承継時には、分散した自社株式の事業用資産の買い取りや、相続や贈与によりそれらの資産を取得する際に、多額の資金が必要になる場合があります。そういったときに利用できる金融支援の制度があります。

1.低利融資
経営承継円滑化法により、会社または個人事業主が、事業承継時に自社株式や事業資産を買い取る場合や相続税・贈与税の支払いをする場合に、7億2千万円(うち運転資金4億8千万円)を上限に、通常よりも低い金利で融資が受けられます。

2.信用保証枠の拡大
経営承継円滑化法に基づく認定を得た会社及び個人事業主が、事業承継に使用する資金を金融機関から借り入れる場合には、信用保証枠が最大2億円まで拡大されます。

3.適用要件
経営承継円滑化法における金融支援に関する適用要件は以下の3点です。
(1)中小企業基本法上の中小企業者であること(上場企業や医療法人、社会福祉法人、外国会社は除外)
(2)事業承継後に売上高が減少したことや相続税負担が発生していることなど
(3)貸付を受けた資金が、株式が事業用資産の買取資金、相続税納税資金、遺留分減殺請求への対応資金に利用されること

4.申請の流れ
金融支援を受けるための申請の流れは以下の通りです。
(1)戸籍謄本や従業員数証明書など、必要な書類をそろえて各都道府県へ申請する
(2)都道府県知事から認定を受ける
(3)都道府県の認定書を必要書類に添付して信用保証協会や日本政策金融公庫などに提出する
遺留分に関する民法の特例で生前対策
相続人が複数いるとき、先代経営者から自社株式の大部分を引き継ぐことで、相続時に相続人間で不平等が生じて遺留分を巡り争いが起きる可能性があります。その争いを防ぐために、民法の特例制度が用意されています。

5.遺留分とは
遺留分とは、各相続人の最低限の取り分のことです。たとえば長男・次男を遺して亡くなった父親が生前に「長男に全て財産を譲る」との遺言をしていた場合、次男は遺留分を侵害しているとして長男に対して遺留分を請求(遺留分減殺請求)することができるのです。

6.生前贈与株式を遺留分の対象から除外
先代から事業を承継した後継者は、自社株式の大半を生前贈与されることになります。そのとき、遺留分権利者全員と合意し、家庭裁判所の許可を受けることで、生前贈与された自社株式などの財産が遺留分を算定する基礎財産から除外できるようになりました。

7.生前贈与株式の評価額をあらかじめ決められる
また、生前贈与後に後継者の活躍で株価が上昇し、その後相続が発生した場合に、上昇後の評価額で遺留分が算定されてしまいます。これを防ぐため、後継者が遺留分権利者全員と合意して家庭裁判所の許可を受けることで、贈与された株式の価額を生前贈与時の評価額で固定できるようになりました。

事業承継補助金

事業承継には、今後の事業展開に必要な設備投資や販路拡大に活用できる補助金制度があります。経営者の交代や事業再編・事業統合を契機とした経営革新を行うときにかかる経費を補助することで、日本の経済活性化を図ることを目的としています。事業承継補助金には「後継者承継支援型」と「事業再編・事業統合支援型」の2通りがあります(2019年度分は、5月31日に締め切っています)。

1.最大で1,200万円の補助金が受けられる
条件にもよりますが、補助金は100万円〜1,200万円を受け取ることができます。個々の条件については以下の通りです。

※「上乗せ額」とは、事業転換*により廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費及び移転・移設費(Ⅱ型のみ計上可)がある場合のみ認められる補助金額
(参考:事業承継補助金事務局「平成30年度第2次補正 事業承継補助金 公募要領」p.14)

2.補助対象者
補助が受けられるのは、以下の7つの条件に当てはまる者です。
(1)日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
(2)地域経済に貢献している中小企業者などであること。
(3)補助対象者又はその法人の役員が、反社会的勢力でないこと。
(4)法令順守上の問題を抱えている中小企業者などでないこと。
(5)経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていないこと。
(6)補助対象事業に係る全ての情報が、匿名性を確保しつつ公表される場合があることに同意すること。
(7)事務局が求める補助事業に係る調査やアンケートなどに協力できること。

3.申請の流れ
申請は以下の流れで行います。基本的に承継者が申請を行いますが、必要な場合には先代経営者と共同で申請をします。
(1)認定支援機関に相談する。
(2)事業承継補助金事業のホームページより「認定支援機関による確認書」をダウンロードし、認定支援機関に確認を受ける。
(3)申請マイページを開設し、必要事項を入力して必要な書類を添付ファイルで添付する
(4)申請マイページ内で宣誓事項、申請内容を確認して完了する。

まとめ

事業承継の際は、国からさまざまなサポートを受けることができます。どのサポートを受けるのが良いのかわからないときは、事業承継の経験が豊富な弁護士や税理士、公認会計士などに相談しながら利用するようにしましょう。
また、経営者が長年経営をしてきた企業は、創業時から比べると顧客、取引先、従業員も増え、地域社会にとってなくてはならない存在となっています。こういった点から、上場企業のみならず中小企業も社会の公器と言えるでしょう。後継者の選択、育成には非常に困難が伴いますが、公器性を考えると、後継者不在による廃業は何とか避けたいものです。企業の価値を受け継いでくれる第三者承継の道も広く検討してみる価値があるのではないでしょうか。

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元記事はこちら
https://keiei.freee.co.jp/articles/c0201641

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