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会社買収の際に注意すべき契約書のポイントや注意点

会社買収の際に注意すべき契約書のポイントや注意点

会社買収というと、以前はハゲタカファンドなど、強引な敵対的買収が目立った時期もありました。

しかし、今は事業承継や経営戦略の一環として、前向きに捉える風潮になっています。

今回は会社買収の際にもっとも重要な契約書に関して、そのポイントや注意点を見ていきます。

会社買収を実施するまでの必要手順

まずは会社買収をするまでの必要手順を確認していきます。

相手を確定させるまでの時間は長く必要なのに対し、相手との基本合意から契約完了までは、迅速に進めなくてはなりません。

買収先の選定を進めながら、契約書などについては準備しておくことが必要です。

必要手順
①相手先の選定・確定
②基本合意
③デューデリジェンス
④条件交渉
⑤契約・代金受け渡し

必要手順の中で、②の基本合意と⑤の契約・代金の受け渡しで契約書を交わします。

基本合意では基本合意書と機密保持契約、⑤の契約では最終契約書が必要です。

契約書を交わす際に注意すべき項目

各々の契約書で注意すべき項目について、見ていきましょう。

(1)機密保持契約書
会社買収においては、買収先の企業内容などの非公開情報を入手する必要があることから、機密保持契約を結ぶのが一般的です。

また、買収を検討していること自体も周囲に知られないように、秘密にしておかなければなりません。

機密保持契約書においては、どこまでを機密保持の対象にするかがポイントです。

機密の範囲は、やや広めに取りつつも、あいまいにならないように具体的な範囲をはっきり決めておきましょう。

また機密が漏洩した際の責任についても明記が必要です。

契約書に入れないと、損害賠償が請求できない可能性があります。

(2)基本合意契約書
基本合意契約書は必要な書類ではないのですが、この後のデューデリジェンスに向けた、”区切り”を意味するものです。

お互いが買収に向けて協力し合うことを確認する意味でも、結んでいたほうが良いと考えられます。

基本合意書の中では独占交渉権、法的拘束力の範囲などに注意しましょう。

独占交渉権は、必ず入れておきたいポイントです。

機密保持契約を結んでも、独占交渉権を持たなければ、買収先は別な相手とも交渉することが可能となってしまいます。

したがって買主側は、独占交渉権を基本合意の中に入れる必要があります。

一方で、売主側は独占交渉権に期限を定めることで交渉を早くまとめることが可能です。

基本合意をしたら、買収に向けお互いに努力していくことは当たり前と思うかも知れませんが、さまざまな障害が立ちふさがる可能性があります。

法的拘束力をつけても、相手が絶対に裏切らないという保証はありませんが、今後の交渉をスムーズに進めるためにも、独占交渉権や秘密保持には法的拘束力を持たせたほうが良いでしょう。

(3)最終契約書
デューデリジェンスを経て、条件交渉をおこない、最終的に合意した事項をまとめるのが最終条件書です。

売買条件や資金の受け渡し日などを決めるだけでなく、前提条件、遵守事項、表明保証、補償条項などのポイントがあります。

①前提条件
前提条件とは、会社買収の際にクリアされていなければ、買収が実施されないという条件のことを指します。

許認可の必要な業種であれば、その許認可が承継されることなどが前提条件です。

②遵守事項
遵守事項とは、主に受け渡しまでに売主が果たさなければならない義務のことです。

先にあげた許認可の承継のように行動を起こす必要のある義務から、会社経営に重大な影響を及ぼす契約や資産の処分をしないなどの行動を制約するような義務まであります。

③表明保証
表明保証とは、企業情報などが正確であることを保証するものです。

とくに買収する側にとっては、会社買収後にデューデリジェンスで発見できなかったトラブルが出てくることが一番の心配事です。

そのようなときにも、表明保証を入れて損害賠償を請求できる形にしておけば買収のリスクを減らすことができます。

④補償条項
補償条項は、前提条件や遵守事項、表明保証などについて違反があったときに、買主が損害賠償請求をするためのものです。

一方、売主からすると、いつまでも損害賠償のリスクを負いたくないでしょうし、また買収金額以上に損害賠償を請求されても困ります。

したがって補償条項で金額や賠償の請求期間を決めるのです。

損害賠償金額は、買収金額を上限とし、請求期間は、買収後1年程度と定める場合が多いようです。

会社買収の際に債務が残っていたときの対処法

中小企業であれば、銀行借入をしているところがほとんどです。

一般的な企業買収である株式譲渡がおこなわれたとすると、その借入はそのまま会社に引き継がれます。

買収側としては、借入を継続するか、借り換えをするか等を検討することになるでしょう。

しかし中小企業の場合、社長の個人保証がついていることも多くあります。

せっかく会社を売却しても会社の借金の保証が残ったままでは、安心できません。

なので、買収を境に保証を外してもらうことになります。

ただし、その際にも機密保持は必要ですので買収先も含めて、秘密保持契約を結ぶなどの検討が必要です。

まとめ

会社買収の際に注意すべき契約書のポイントや注意点を説明しました。

会社買収は、秘密性の高い契約が必要であるとともに、契約前後にさまざまな条項をつけてリスクを軽減しなければなりません。

もし会社買収の当事者になるのであれば、専門家に相談することをおすすめします。

参考:
M&A総合研究所ポータル
M&Aの契約書とは?契約手順に沿って意向表明、基本合意書、最終契約書を解説します。
https://mastory.jp/m%EF%BC%86a%E3%81%AE%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%9B%B8/

山田コンサルティンググループ
中小企業のM&Aにおける法律手続きの注意点・留意点
https://www.ycg-advisory.jp/knowledge/post/practice/contract/

M&Aの際、会社の借入金や個人の連帯保証はどうなるのか?
https://bizval.jp/media/news/006

PROFILE

ファイナンシャルプランナー・行政書士 青野 泰弘

1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。

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