スタイルのある生き方へシフトしたいビジネスパーソンのためのニュース・コラムサイト。
検索
独立ノウハウ・お役立ち

中小企業に多く発生している事業承継問題の解決方法

中小企業に多く発生している事業承継問題の解決方法

M&A関係者によると、最近、個人の会社員から「安く買える会社はありませんか? 」という問い合わせが増えているそうです。

2018年4月出版の「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい」(三戸 政和著、講談社)の影響で、ゼロイチから起業するより小さい会社を買い取って経営者となる選択肢を考える人が増えています。

今回は事業承継問題の解決方法の一つ、事業引継ぎについて解説します。

1.事業承継と事業継承の違いとは何か

事業承継と事業継承、同じような言葉ですが、“承継”と“継承”の使い方に違いはあるのでしょうか。

国語辞典(三省堂 大辞林)で調べてみました。

承継:先の人の地位・事業・精神などを受け継ぐこと
→使用例 伝統を承継する、先祖の位を承継する
継承:先の人の身分・権利・義務・財産などを受け継ぐこと
→使用例 王位を継承する

国の制度や補助金には、「事業承継」という言葉が使われていることから、関係省庁の使用例を調べてみました。

経済産業省:事業承継ガイドライン、事業承継マニュアル、事業承継補助金など
国税庁:事業承継税制、認定承継会社など
金融庁:事業承継ファンド、事業承継支援など

官公庁の事業承継に関する制度や事業名には、“事業承継”に統一されています。

一方、一般的な身分・権利・義務・財産などを受け継ぐ場合には“継承”が使われています。

2.中小企業における事業承継問題とは?

商工リサーチの調査によると、後継者がいないことを理由として、年間約7万社の中小企業が廃業しています。

しかもその半数は経常黒字で経営していたにもかかわらず、後継者を確保できず経営者の高齢化が進み廃業に追い込まれているのです。

さらに、中小企業特有の事業承継上の問題として、下記の問題があります。

(1)会社の所有と経営が分離されていない
(2)従業員の株式取得資金確保が困難

(1)では、後継者に会社の借入金の個人保証を求められることや、株式が親族間に分散し後継者に集中することが難しいなどの問題があります。

(2)では、従業員が株式を買い取る資金を持たず、金融機関からの借入も困難で事業承継ができないなどです。
これらの事情から、中小企業の後継者探しはますます難しくなっており、このまま経営者の高齢化が進むと、多くの中小企業が廃業せざるを得なくなります。

中小企業庁では、後継者のいない中小企業の事業承継の選択肢として、外部への事業引継ぎ(M&Aなど)を推進しています。

また、中小企業庁は安心してM&Aによる事業の引継ぎができるように「事業引継ぎガイドライン」や経営者向けの「事業引継ぎハンドブック」を作っています。

3.外部に対し承継募集をおこなう方法について

中小企業の事業引継ぎを支援するため、全国にある事業引継ぎ支援センターで無料の相談窓口を設けています。

相談後、事業引継ぎ支援が必要な場合は、全国の企業売買情報がある事業引継ぎ支援データベースに集約され、民間支援機関の紹介を受けたり、都道府県の事業引継ぎ支援センターで支援を受けるなどして、他社への事業引き継ぎをおこないます。

窓口相談で経営改善など事業引継ぎ以外の課題があると判断された場合は、地域の商工会議所を紹介され、その課題に取り組むことができます。

①国や市町村で運営しているもの
・事業引継ぎ支援センター
事業引継ぎ先の紹介では、金融機関や商工会議所、業界の関係者から紹介を受けることが多いようです。

各都道府県の事業引継ぎ支援センターでは、紹介を受けた引き継ぎ先と初期合意ができている案件や、マッチング候補が決まっている案件の契約サポート、登録民間支援機関での紹介がうまくいかなかった場合の支援を受けることができます。

譲渡企業の約70%は従業員数10名以下であり、小規模事業者のマッチングで多くの実績を持っています。

詳しくは、下記のサイトをご参照ください。
参考:中小機構「事業引継ぎポータルサイト」
http://shoukei.smrj.go.jp

②企業が仲介をしているもの
・M&A会社
M&A会社は、日本全国を対象とする上場会社から、規模や業種を絞ってニッチ市場のM&Aを扱う会社まで多数あります。

事業規模や業種、事業引継ぎにかかる費用も異なります。

得意分野が異なる会社に依頼しても成果は見込めません。

M&A会社に依頼する場合は、あらかじめ無料の相談会やセミナーに参加し、最適なM&A会社を選ぶことが大切です。

4.まとめ

高齢の経営者のなかには、一生経営を続ける覚悟を持っている方も少なくないかもしれません。

しかし、事業そのものを継続していくには、何らかの形で事業を引継ぐ準備が必要です。

情報収集を兼ねて、金融機関や商工会議所に相談することから始めることをおすすめします。

PROFILE

経営コンサルタント 奥野美代子

外資系の高級消費財ブランドで、日本進出の子会社立ち上げから26年間、マーケティングマネジャーとして、ブランドPR、販売促進、店舗開発、リテール支援を行うなど幅広い経験を持ちます。
独立後は、中小企業診断士とFPのノウハウを生かし、経営者の法人と個人の財務コンサルティングやリスクマネジメント、事業計画策定、マーケティング支援など幅広い支援を行っています。

アントレ 独立、開業、起業をご検討のみなさまへ

アントレは、これから独立を目指している方に、フランチャイズや代理店の募集情報をはじめ、
さまざまな情報と機会を提供する日本最大級の独立・開業・起業・フランチャイズ・代理店募集情報サイトです。