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事業承継を円滑に進めるため方法と事業承継マニュアルについて

事業承継を円滑に進めるため方法と事業承継マニュアルについて

2015年の中小企業庁の調査によると、国内企業数の99%を占める中小企業の事業承継が進んでいません。

後継者が見つからないまま経営を続けざるを得ない経営者が増加し、経営者の年齢のピークは66歳に達しています。

また、日本政策金融公庫が2016年に全国の経営者に対し実施したインターネット調査によると、約5割の経営者が自分の代での廃業を考えているようです。

そのうち3割の経営者は、廃業の理由として後継者がいないことを挙げています。

そのような理由もあり、事業承継マニュアルが中小企業庁により公表されました。

今回はこの事業承継マニュアルについて紹介します。

事業承継マニュアルが登場した背景

中小企業が廃業すると、従業員が職を失うばかりでなく、仕入先・販売先の事業者の経営にも大きな影響を与えます。

事業規模は小さくても、職人の優れた技術や独自のネットワークで代替できない製品を作っている町工場も少なくありません。

中小企業の事業承継は、個別企業の問題ではないのです。

実は、事業承継問題は最近始まった問題ではありません。

中小企業庁は2006年に中小企業の円滑な事業承継を推進するための「事業承継ガイドライン」を公表し、経営者向けに『事業承継ハンドブック 20問20答 中小企業の円滑な事業承継のための手引き』という冊子を発行しています。

それから10年経っていますが、中小企業の事業承継はほとんど進んでいません。帝国データバンクの調査によると、60代以上の経営者の約半分は後継者が決まっておらず、このままでは、後継者不足を理由とする廃業が大幅に増えてしまいます。

そのような背景から、中小企業庁では経営承継円滑化法などの最新の支援制度を盛り込んだ「事業承継ガイドライン」を10年ぶりに改定し、2016年12月に発行しました。また、同ガイドラインに沿って、経営者が具体的に事業承継対策を進めることができるように「事業承継マニュアル」が作られています。

2.事業承継方法の変化とは?

中小企業の事業承継は、主に3つの方法があります。

①親族内承継
現経営者の子どもや親族に承継させる方法で、社内はもちろん取引先や金融機関からも一番受け入れやすい方法です。時間をかけて計画的に後継者を育てることができ、株式の承継も相続対策とあわせて総合的に計画できます。

②役員・従業者承継
親族内承継に次いで多いのは、現経営者と長年一緒に働いてきた役員や従業員の中で、経営者としての能力・意欲のある人を後継者として引継ぐ方法です。経営方針や業界、取引先および社内事情もよく理解しているので、スムーズに事業を継続できます。

親族外承継の問題点は、現経営者が保有する株式や事業で使用する土地・工場などの資産を引継ぐための資金力不足と、金融機関や取引先からの信用を得ることが難しいことです。

③親族外承継(外部への引き継ぎ)
親族や従業員への事業承継が難しくなり、最近増えているのは親族外承継です。事業引継ぎという言葉を使う場合は、企業や個人など、外部の第三者への引継ぎ(M&Aなど)を指します。

公的機関である各都道府県の事業引継ぎセンターや、民間のM&A事業者が売り手と買い手のマッチングをおこなうのです。

最近では、一般的なM&Aだけでなく、事業引継ぎ支援センター内の後継者人材バンクを利用し、後継者の代わりに起業を目指す個人事業主の紹介を受け、事業を引継ぐこともあります。

3.事業承継マニュアルの構成内容

事業承継といえば、税理士や弁護士に相談すると思う経営者も多いようですが、事業で引き継ぐのは、株式や経営権だけではありません。経営資源を「ひと」「もの」「かね」という言葉で表しますが、事業そのものである「もの」と事業を継続するための人や組織の「ひと」もあわせて考える必要があります。

本マニュアルでは、第1章「アウトライン」、第2章「事業承継計画」、第3章「事業承継を成功させるアクション」、第4章「中小企業の事業承継をサポートする取組」の4つの構成で、事業承継に向けた手順が丁寧に説明されています。

特に第1章では、実際の事業承継計画を立てる前におこなうべき5つのステップが具体的に示されています。

ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識
ステップ2:経営状況・経営課題などの把握(見える化)
ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
ステップ4:事業承継計画策定
ステップ5:事業承継の実行

引用:中小企業庁「事業継承マニュアル」p.8
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170410shoukei.pdf

どのような形で承継するにしろ、現経営者が事業にかけた想いを再確認し、後悔しない形で次の経営者に事業を承継するためには、ステップ1から順に取り組んだ上でステップ4以降の事業計画の策定に取り組むことが大切です。

まとめ

事業承継には時間がかかります。準備をせずに高齢を迎え、急な体調不良や認知症の発症で突然事業の継続が難しくなる場合もあります。実際の事業承継は先のことだとしても、10年かけて次世代に引き継ぐつもりで準備を始めても早すぎることはありません。

PROFILE

経営コンサルタント 奥野美代子

外資系の高級消費財ブランドで、日本進出の子会社立ち上げから26年間、マーケティングマネジャーとして、ブランドPR、販売促進、店舗開発、リテール支援を行うなど幅広い経験を持ちます。
独立後は、中小企業診断士とFPのノウハウを生かし、経営者の法人と個人の財務コンサルティングやリスクマネジメント、事業計画策定、マーケティング支援など幅広い支援を行っています。

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