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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第56回・大統領をおもてなし

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第56回・大統領をおもてなし

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

今年5月にアメリカのトランプ大統領が来日し、安倍総理の「おもてなし」が非常に話題になりました。どこで、どんなものを食べたという話がしきりに報道されましたが、では宮中晩餐会で出された料理のメインディッシュは、何のお肉を使った料理だったでしょうか?
肉料理ですから、候補はある程度限られますよね。できればその理由も一緒に考えてみましょう。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

昔から、日本食は海外でも人気です。海外から国賓や公賓がやってくると、日本食でおもてなしすることが多いですよね。

お寿司や刺し身、天ぷらなどが定番で、今回のトランプ大統領の来日でも、炉端焼きのお店で夕食を食べる様子がニュースになりましたよね。

今回のクイズは、そうした日本食の話とはちょっと離れますが、「どういった料理でおもてなしをするのか」を考える中に1つのポイントがあります。

それでは解説します!

日本に滞在中のトランプ大統領に、宮中晩餐会の席で振る舞った料理はラム、つまり「羊」の肉を使った料理でした。

羊肉でもてなされたのは今回のトランプ大統領に限った話ではありません。私の記憶では、この10年間で2、3回、違うお肉が用意されたことがあったと思いますが、ほぼ羊肉が振る舞われています。いわば”鉄板”の料理なのです。

大きな理由として考えられるのは、宗教上の都合で豚や牛を食べられない人が多いからです。確かに羊は世界最古の家畜といわれ、昔から世界中で多くの人に食べられてきました。

つまり、あらゆる国賓が食べられる唯一のお肉が羊肉だということですね(一部の宗教ではダメな場合もあるようですが)。

実はこの羊肉、着眼点として非常に可能性を秘めていると思っています。世界中でもっとも食べられる人が多い肉であるにも関わらず、日本ではどうしてもマイナーな印象がぬぐえませんよね。

ということは、もしグローバルな飲食ビジネスを考えた時に、実は羊肉は日本におけるマイナーさとは裏腹に、世界中の人から支持される可能性があるということではないでしょうか?

日本ではマイナーな「世界のメジャー」に目をつけろ!

実際のところ、東京・文京区に羊のダシでスープをとったラーメンを出すお店があり、行列のできる人気店となっています。実際に外国人のお客も多いようです。いろんな理由で豚(豚骨)が食べられない場合でも、羊のスープなら問題なく食べられますもんね。

人気店「俺のフレンチ」でも、誰もが頼むといわれる名物料理「ロッシーニ」以外でメイン料理を頼もうとすると、羊を使ったお肉が間違いなく候補に挙がってきます。欧米でも、ちゃんとした牧場で育てられた羊肉は高級品として扱われますから、日本人が思っている以上に一般的なものなのです。

今回のポイントは、グローバルで見るとものすごくボリュームが大きいのに、日本では意外とマイナーで手をつけている人が少ないものがある、ということです。

さらには、そこをきちんと見つけ出してビジネスに上手く取り入れることができると、このグローバルの時代において、世界中の人に広く受け入れてもらえる可能性があるんだ、ということです。

例えば、言語の中でも「スペイン語」がそれに当てはまりそうです。日本で第2外国語を学ぶ場合、必修として学ぶ日本語や英語以外だと、中国語や韓国語、フランス語、その後くらいにドイツ語やスペイン語が人気のようです。

でも、世界にはスペイン語圏が非常に多く、世界的に見たらマイナーどころか非常にメジャーな言語の1つなのです。スペイン語が話せると、実は世界のたくさんの人と話ができるわけですね。

宗教の話でいうと、キリスト教に次いで多いのがイスラム教徒です。出生率のバランスから、イスラム教徒の数は増えると予測されており、そこに実は大きな市場があると一部ではいわれています。

そこに目をつけたのが、ユニクロです。イギリス生まれのファッションデザイナーとコラボレーションして、「HANA TAJIMA FOR UNIQLO」というブランド商品を販売し始めました。

これはすごく簡単にいってしまうと、イスラム向けの商品なんです。ユニクロはそこに巨大市場があることに気づいた、というわけですね。

グローバル化が進む今だからこそ、世界に目を向ける必要がある

日本で日本人向けにただビジネスをするだけであれば、もしかしたらあまり考えなくてもいいことなのかもしれません。しかし、グローバル化が進み、簡単に世界中の人たちに向けてビジネスを展開していける今の時代だからこそ、もっと世界に目を向けてみることで大きなビジネスチャンスをつかむことができるのです。

日本の当たり前は、世界の当たり前ではない。よく言われることですが、今一度、頭に入れておいてほしいと思います。間違いなく、そこにビジネスの種があるはずです。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「羊」でした。ちなみに、日本で羊肉がマイナーなのはジンギスカンの影響だという説があります。あの独特の匂いが理由で「羊肉は臭い」というイメージを持つ人が多いのだか。ただ、羊肉にも「マトン」と「ラム」があり、ラムは生後12カ月未満の子羊のお肉のため、臭みがなく食べやすいといわれます。なお、大統領が晩餐会で食べたのはラムのステーキで、中までしっかり焼くベリーウェルダンで供されたのだそうです。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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