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年々増えつつある親族外承継のメリット・デメリットを解説

年々増えつつある親族外承継のメリット・デメリットを解説

中小企業における経営者の高年齢化が進んでおり、事業承継のあり方が大きな経営課題となっています。

そのような環境下で、親族外の事業承継を選択する企業の割合が増加しています。

本稿では、親族外承継の実態やメリットとデメリット、親族外承継を支援する制度について解説します。

親族外承継とは

親族外承継とは、従業員や社外から招へいした者など、親族以外の人間に対して事業承継を行うことです。

少子化が進み、中小企業にとって、我が子に事業を継がせることが当たり前ではなくなった現在、親族外承継の道を選択する企業の割合が増加しています。

日本政策金融公庫総合研究所が、2018年に発表したレポートに掲載されている帝国データバンクの調査結果によると、中規模企業の約6割で親族外承継を実施していることが分かります。

事業承継を行う場合、後継者が経営権と株式の双方を同時に継承するのが一般的です。

ただし親族外承継の場合、事業承継時は、後継者は経営権だけを継承し、前経営者は後継者の経営実績を認めた後に株式の継承を行うケースもあります。

参考:日本政策金融公庫総合研究所 日本公庫総研レポート「親族外承継に取り組む中小企業の現状と課題」

親族外承継のメリット

親族外承継を行うには次のようなメリットが想定されます。

1.後継者選びの選択肢が広がる
親族への事業承継を行う場合は対象者が限定されてしまいますが、親族外承継を行う場合は後継者選びの選択肢が広がります。

周囲も認める人材への事業承継が行われやすくなります。

2.能力のある人材に継がせることができる
後継者選びの選択肢が広がることで、能力のある人材に事業を継がせやすくなります。

後継者の能力不足が原因で、事業承継後に業績が悪化するケースは少なくありません。

親族への承継にこだわった場合、多少の能力不足に対しては目をつぶりがちですが、親族外承継の場合は、最適な人材を選ぼうとする経営者の気持ちが働きます。

3.経営の一体性を保ちやすい
現経営者の理念や方針に共感した人材が事業を承継する場合、承継前の事業の方向性との間にギャップが生じない形で経営を継続することができます。

親族内承継の場合、経営者が変わったことで会社としての考え方が変化し、その変化についていくことのできない人材が社外に流出してしまうことも少なくはないのですが、親族外承継ではそのようなリスクを回避することが可能となります。

親族外承継のデメリット

親族外承継を行うことには次のようなデメリットが想定されます。

1.株主との関係性が悪化する場合がある
事業承継を行う場合は、現経営者が保有する株式の大半を後継者に譲渡することが一般的です。

しかし、親族など現経営者以外の人間が株式を保有しているケースも少なくありません。

現経営者が経営を行っていたときは、ほかの株主たちが経営の方針に理解を示していたとしても、事業承継後に親族外の後継者が打ち立てた経営方針に対してほかの株主たちが理解を示すとは限らないのです。

後継者が発行済株式の過半数を有さない場合、取締役の選出や解任、取締役の報酬や配当の決定などの事項を単独で決議することができなくなります。

ほかの株主との関係性が悪化することで、事業承継後の経営がスムーズに進まなくなることがあります。

2.現経営者の会社債務に対する個人保証の引き継ぎが難航する場合がある
中小企業では、経営者が金融機関からの借入をはじめとした会社債務に対して個人保証をしているケースが多いです。

事業承継を行う場合は、個人保証も後継者が引き継がなくてはならなくなりますが、個人としての保有資産が少ない、経営の実績がない後継者が引き継ぐことに債権者が理解を示さないことがあります。

3.人材の流出が生じる場合がある
中小企業では、経営者の強いリーダーシップのもとで経営が行われているケースが多いです。

カリスマ性のある経営者を慕って働く従業員も少なくありません。

そのような中、事業承継が行われることに対して承継前の経営者を慕っていた人材が反発し、社外に流出してしまうことがあります。

親族外承継をする際に活用できる制度

経営者から後継者に株式を移転する場合、後継者に贈与税や相続税の支払い負担が生じます。

この負担を軽減するために、一定の要件のもとで贈与税や相続税の支払いが一定割合猶予され続ける“事業承継税制”があるのですが、2018年4月1日からの10年間は、要件を一切なくした上で猶予の割合を100%とする特例措置が講じられました。

さらに、株式の生前贈与を行った場合に法定相続人となる親族から遺留分侵害の主張をされてしまうリスクを回避するために、相続開始より10年以上前に行った生前贈与に関しては、遺留分に含めなくてもよいとする民法の特例が近々施行される見通しとなっています。

まとめ

親族外承継は、周囲からの理解と協力が得られなければうまく進めることはできません。

親族外承継を成功させるためには、極力長い時間をかけて、計画的に事業承継のための準備を進めていく必要があります。

PROFILE

大庭経営労務相談所 代表 大庭真一郎

東京生まれ。
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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