酒井 恵さん(43歳)
VOL.239移動火葬車によるペット火葬・ペット葬儀
今でこそ「ペットは家族」ですが、昔は違いましたよね。20年前、私がかわいがっていた犬は市の火葬場で事務的に扱われました。すっきりしない感じがずっと残っていたんです。あの時ちゃんと見送ることができたら、気持ちの整理もついたはずなのに。
ペットの火葬業者の存在を知ったのは2年前のことです。都市部なら個別火葬も珍しくない時代ですが、地元にはほとんどありません。だからモデルなし。手探りでした。火葬車メーカーを探して「すいません、おいくらですか」と尋ねるところから。商工会議所の助けを借りながら事業計画を書いて融資を受けて。市の火葬場で働いている方に1日何件ぐらい火葬があるのか聞きに行ったこともあります。最近はお役所も開かれていますから「いいよ、いいよ」と快く教えてくれました。
調剤薬局に勤めていた頃に培われたものもあるかもしれません。時間をかけて、心を痛めている方のお気持ちをくむよう努めています。皆さん最初は、家族が亡くなった悲しさと「この葬儀屋は大丈夫かな」という不安で顔がこわばっているんです。でも火葬中にお話をして、お骨上げを一緒にさせていただくうちに少しずつ死を受け止めるのだと思います。「こんなに丁寧にしていただいて」と、ほっとした顔で帰っていかれる。自分の役割を果たせたと思うのは、そういう時です。
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志
アントレ2019.春号 「金も人脈も経験もなかった『まるごし企業 7人の勝ち方』」
より