能村夏丘さん(38歳)
VOL.238都内8店舗、醸造所併設のビアレストラン
会社を退職した後、自分探しの旅に出ました。僕は消去法が好きなタイプで「これがやりたい」というものはない。でも衣食住に関わるものがいいとは思っていたんです。栃木の小さなビール醸造所でビールを飲んだ時、パズルがはまった感覚がありました。これがやりたい、この規模ならやれると。当然、ビールは大好きですし。
最初は独学。次に岡山県にある吉備土手下麦酒醸造所の永原社長に弟子入りしました。街で作られたビールをその街の人が飲む。僕の理想を体現している人。何人も弟子入りを断ってたみたいですけど、「やる」と決めていたのは僕が初めてだったとか。夜行バスで岡山まで通いながら東京で開業準備を進めました。お金が足りない分は自作。開業までの間、DIYでギコギコやっていると近所の人が「頑張ってね」と声をかけてくれたのが励みでした。
昔はお店1つでいいと思っていたんです。でも「自分の街にもあれば」と言ってくれるお客さんや、「僕もこんな店やりたいです」と目をキラキラさせる青年が背中を押してくれました。今は都内近郊に8店舗。僕は経営を別の者に委ねて、醸造家になりたい人を助け、増やす事業に注力してます。夢は1000店舗。社長業は降りる、けれども自分の夢は育てたいってわがままですか(笑)。でも僕にしかできない仕事だと思っているんです。
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志
アントレ2019.春号 「金も人脈も経験もなかった『まるごし企業 7人の勝ち方』」
より