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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第50回・「大当たり」の裏側

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第50回・「大当たり」の裏側

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

朝の情報番組「めざましテレビ」で毎朝実施されている、「めざましじゃんけん」というコーナーがあるのをご存じでしょうか。これは、じゃんけんで点数を貯めてプレゼントに応募できる仕組みなのですが、最近、その懸賞にちょっとした変化が感じられます。実はこの変化、世の中のあらゆるところで起こっていることと共通するのですが、それはどういう変化でしょうか?

「めざましじゃんけん」を知らない人もいますよね。そういう人は、最近の懸賞についての変化、という視点で考えてみてもらえばいいと思います。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

最近のテレビは、視聴者参加型のコンテンツを取り入れた番組が増えています、リモコンのdボタンなどを使ってクイズに参加したり、勝敗を予想したり投票したりと、参加の内容もいろいろ。その後に懸賞に応募できるものも多くなっています。

今回取り上げた「めざましじゃんけん」は、番組内で1日に4回実施する参加型のコーナーです。じゃんけんの勝ち負けに応じて点数が貯まっていき、一週間で100点を超えれば豪華な商品に応募できる仕組みとなっています。

このコーナーを目当てに、時間になったらチャンネルを番組に合わせるという人もいるかもしれませんね。

それでは解説します!

このコーナーで最近よく見かけるのが、「ボーナスチャンス」です。勝ち負けに限らずその場で懸賞に応募でき、しかも当選したかどうかがすぐに分かるというものです。

しかも、ここがポイントなのですが、当選者数がものすごく多いため、いうなれば「簡単に当たる」のです。

少し前は、「ローソンのコーヒーが20万人に当たる」というボーナスチャンスを実施していて、私の周りでも何人もの人が当選していました。

実はこれに限らず、ここ最近は「当たりやすい懸賞」が非常に増えています。

背景にあるのは、企業のビジネスモデルの変化です。分かりやすくいうと、「懸賞を実施する目的」が変わってきているということです。

これまでは「懸賞を見てくれる人が何人いて、実際に応募がどれくらいあるか」という「広告効果」を重視するのが一般的でした。

しかし最近は、「懸賞を通じて実際に動いてくれる人が何人いるか」が企業の求める指標になっているのです。つまり、当ててもらうことが目的ではなく、お店に来てもらうことが目的なのです。だからたくさんの人に当選してもらい、それを機に来店を促すのです。

「かつや」繁盛の裏にクーポンあり!?

最近話題の「PayPay」も、発想はこれと全く同じです。

昨年末に行った1回目のキャンペーンは、「PayPay」自体を多くの人に知ってもらうことが目的でした。一方、現在行っている2回目のキャンペーンは、身近なお店で気軽に使ってもらうことを重視しています。還元額の上限が低いのもそれが理由です。

「LINE Pay」も「楽天ペイ」も同様で、「とにかく一度使ってみると結構いいものが当たるよ」というような仕掛けがされています。

ほかにも、Tカードを使っている人は分かるかもしれませんが、提携先で支払い時に提示すると、「10%オフ」「ポイント10倍」みたいなお得なクーポンがもらえたりします。あれも同じで、他のチェーン店のクーポンであっても、「お得だしせっかくだから行ってみよう」という気持ちにさせるわけです。

ちょっと面白いところでは、カツ丼やとんかつを提供するチェーン「かつや」の話があります。現在、売り上げも集客も絶好調のチェーンとして話題ですが、その理由の1つが、支払い時に発行されるクーポンだといわれています。

具体的には、次回使える「100円割引」のクーポンが毎回もらえるのですが、実はこのクーポンの利用率が約50%なんだとか。490円のカツ丼に対して100円引きですから、かなりお得です。それもあって約半数もの人がリピートしているわけで、この数字はかなり高いといえます。

とはいえ、常時カツ丼を20%オフで提供しているようなものです。収益面でどうなのか心配してしまいますが、実はクーポンの利用率も織り込んで価格設定してあるのだとか。実に賢い方法でリピーターを獲得している、今ならではの事例といえそうです。

今の時代、リピーターはこうやってつくる

今回のポイントは、「集客のためにお金(クーポン)を配る」という時代が間違いなくきているということです。

これまでのように漫然とチラシをまくよりも、一度来てもらう方法を考えて、さらにお得なものを提供していく方が、リピーターも含めて獲得しやすいわけですね。チラシをまくにしても、お得なクーポンをつけるなどの工夫が必要なのは間違いありません。

経営者としては、こうしたルールに乗っかるか、一切やらないか、価格体系を変えて損しないバランスを探るか、いずれかの選択をして、時代の流れに対抗していかないといけないのかもしれません。

皆さんのビジネスではどういうことが考えられそうか、一度想像してみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは、「やたらと懸賞が当たる」でした。クーポンを使う側の心理としては、うまく活用してお得に買い物をしたいところです。案外、その発想で施策を考えていけば、面白いアイデアが見つかるかもしれませんね。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)。

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