ゲストハウスや民泊といった言葉が最近盛んに報道されるようになりました。
ゲストハウスとは、宿泊施設のことを指し、決まった定義はないのですが、マスコミなどでは安価な宿泊施設を指すことが多いと言えます。
また、特に個人宅や投資用マンションなど、個人の住居を貸し出すことがあり、これを“民泊”と呼んでいます。
さらに、「オリンピックを前に需要が高まるのではないか」「副業の1つになるのではないか」などとも言われています。
ここでは、主に法律の観点から、ゲストハウス(民宿)開業までの説明をしたいと思います。
ゲストハウス開業に向けて知っておくべき法律
ゲストハウスを開業する上で知っておくべき主な法律は、以下のとおりです。
1.住宅宿泊事業法(民泊新法)
まず「宿泊施設」と聞いて思い浮かべるのがホテルや旅館ではないでしょうか。
これらを規定しているのが、旅館業法です。
この旅館業法では不都合が出てきたため、民泊を規定する住宅宿泊事業法ができました。
宿を貸すには、今まで旅館業法に基づく必要がありました。
そのためには、行政から許可をもらうという高いハードルがありました。
最近では外国人観光客も増え宿泊施設を増やす必要性が増しています。
また、自分の家の一部や空き家を有効活用したいというニーズも高まってきました。
そうした中、従来の旅館業法だけではカバーしきれなくなり、住宅宿泊事業法の制定に至ったのです。
住宅宿泊事業法では、その名のとおり“住宅”を人に貸す場合を想定しています。
行政から許可をもらうのではなく、届け出で済むようになっています。
もっとも、本来は“住宅”である必要があり、一年中、民泊に使うのであれば、それはもう旅館であって“住宅”ではなくなってしまいます。
そこで、営業日数を年間180日以内(条例でもっと少なくなるケースもある)とすることになっているのです。
このように、簡易に始められるとはいえ、一年中収益を上げるのは難しいというデメリットもあります。
2.国家戦略特別区域法(特区民泊)
旅館と民泊の中間的なものとして、特区民泊というものもできました。
これは、国家戦略特別区限定で、年間180日間制限なく民泊ができるという制度です。
他方行政からは認定を受ける必要があり、2泊3日以上の宿泊に限られるなど、デメリットもあります。
国家戦略特別区内に居住されている方は、民泊とのメリット・デメリットを比較して、どちらの制度を使うか考えることになります。
3.建築基準法
具体的な設備などについては、建築基準法による制限があります。
宿泊者の安全確保のために設置が義務付けられているものがあります。
スプリンクラーなどは、建築基準法(施行令)を参照する形で規定されています。
ゲストハウス開業時の費用の集め方
このように、ゲストハウスは“観光客のため”という面もありますが、“貸主側の収益”という面もあります。
その開業資金はどのように考えていったら良いでのしょうか。
まず、旅館とは異なり本来は住宅なので、大規模なリフォームまでは要らないはずです。
ただ、以下のような費用などが必要になります。
①まだ物件が手元にない方はもちろんその入手費用
②先の建築基準法の基準を満たすような設備の設置
③台所などの動線を整えたり部屋を確保したりするためのリフォーム代
資金を集めるのには、通常は金融機関を利用されると思います。
日本政策金融公庫などでは、新規開業資金の融資も行っているので活用できそうです。
あとは、資金の一部として、自治体の助成金や補助金を活用する方法もあります。
旅館とは異なり、開業時に多額の費用はかからないことが多いとは言えますが、開業にあたって自己資金が不足する場合には、こうした融資や助成金が使えないか検討してみてください。
まとめ
今回ご紹介したように、人に宿を貸す方法が法律で整備され、“民泊”または“特区民泊”が用意されました。
オリンピックに向けて、国も推進していきたい分野でもあります。
旅館業法しかなかった時代に比べれば、民泊を始めるハードルは格段に下がったと言えます。
家の一部を人に貸して少しでも利益を上げたいとお考えの方は、民泊を始めるチャンスであると言えるでしょう。
弁護士 神尾尊礼
得意分野は生活全般や企業活動全般で、退職相談を受けることも多い。
「敷居は低く満足度は高く」がモットー。
開業資金を抑えて起業したいという方は開業書類作成ツールの利用も検討してみてはいかがでしょうか。