フリーランス(自営業者)になることを選んだ時点で、必然的に迫られるのが経理処理と税金の申告です。
今回は、フリーランスが知っておきたい税金への対策(節税対策)を簡単にご紹介します。
大前提として
極論を言ってしまえば、税金を安くするためには“所得を減らせば良い”となります。
所得、つまり儲け(利益)を安くするためには、無駄な経費をたくさん使えば良いのです。
しかし、これではいくら税金が安くなっても本末転倒となってしまいます。
節税対策を活用する際にとても重要なのは“仕事の健全性を損ねないものを選ぶこと”です。
具体的な方法をご紹介します。
家族情報の整理
家族を養っている場合に「配偶者控除」「扶養控除」といった制度が適用できることは、みなさんもよくご存知かと思います。
特に「配偶者控除」は、近年さまざまな改正が加えられ、活用できる人の範囲も変化が生じました。
とても重要なのは、個人事業主本人と家族間でのやり取りです。
このコミュニケーションが不足していたため、大学生のお子さんがアルバイトをし過ぎて「扶養控除」を逃してしまった、といった事例が決して少なくありません。
家族と“今どれくらい稼ぎがあるのか? ”について、しっかりと話し合いをしておきましょう。
「青色申告制度」の適用
青色申告は“健全な事業経営”に必要不可欠な制度です。
適用するだけで10万円の「特別控除」(経費の上乗せのようなもの)が、事業規模がそれなりにあり、複式簿記を採用した場合には65万円もの「特別控除」が適用できます。
家族に仕事を手伝ってもらう場合にも、青色申告であれば事前に届け出をすることで「青色事業専従者給与」という制度を活用することができます。
そのほか、ともかく青色申告は“絶対に活用したほうが良い制度”です。
よく「事業規模が小さいうちは白色申告の方が良い」「白色申告なら帳面をつけなくて良いから楽」といったことをおっしゃる方がいます。
はっきり言えば、どちらも大嘘です。
まず、規模が小さいからこそ青色申告の効果は絶大です。
特に、創業当初、資金繰りが厳しいときに「特別控除」や「青色事業専従者給与」の存在は本当に大きな助けとなります。
そして、近年の改正により、白色申告者も会計帳簿の作成は義務とされました。
従って、現在青色申告を採用しない理由はほとんどありません。
「設備投資に関する特例」
仕事で利用する機械装置などを購入した場合、中小事業者には特例が用意されています。
通常は何年にも渡り経費にするところを、何割かを即座に経費として落とすことが可能です。
あるいは、購入額に応じた税額控除(税金を割り引いてくれる)を適用することもできます。
詳細については「中小企業投資促進税制」を確認してみてください。
また、「経営力向上計画」と呼ばれる制度を活用すると、一部の建物附属設備や器具備品などが対象に含まれるだけでなく、100%の即時償却(全額がすぐ経費に! )や税額控除の上乗せも適用可能です。
「経営力向上計画」は自分で作成することもでき、認定経営支援機関に相談することで作成の支援を受けることもできます。
余裕があるなら保険の活用を
それなりの所得があって手元資金にも余裕があるのであれば、保険を活用することも一案です。
民間の生命保険などの中には、上手に活用することで結果的に節税となるものもあります(ただし、個人事業主の場合はその活用がかなり制限され、基本は法人経営が前提です)。
また、民間の保険以上に強力なのが社会保険料などの上乗せです。
国民年金基金、確定拠出年金(iDeCo)、小規模企業共済などの掛け金を支払うと、相当な割合で節税することができます。
ただし、これらの方法はあくまでも“手元に余裕がある人”向けです。
あまりカツカツの状態での導入は、自己資金不足にも陥ってしまうので注意しましょう。
「法人成り」の検討
ある程度事業規模が大きくなった場合、「法人成り」を検討することも有効です。
法人にした場合、税負担の安定化や分散化が図られ、結果的に大幅な節税につながることもあります。
また、消費税の免税を活用するためにも法人設立が活用されることが多いです。
ただし、法人の設立には費用がかかりますし、また社会保険への加入など検討しなければならない要素も多々あります。
今回は、活用をするとしても副作用(後で税金が高くなったり、事業の健全性を損ねたりする)が少ないものを紹介しました。
それでも、設備投資や保険の加入などから、「法人成り」は今後の事業を見据えて決断する必要があります。
じっくりと自分で検討するか、あるいは専門家(税理士など)に相談することをおすすめします。
大切なのは"やった後に相談"するのではなく"やる前に相談"することです。
まとめ
個人事業主が活用できる節税対策の代表例として「親族情報の整理」「青色申告制度の導入」「設備投資に関する特例の利用」「保険料などの上乗せ」「法人成り」といったものがあります。
どの制度も上手に使えれば非常に高い効果を発揮しますが、扱い方を間違えると仕事の健全性が損なわれてしまいます。
入念に検討し、専門家へ相談しましょう。
税理士 高橋昌也
その後、ファイナンシャルプランナー資格取得し、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。
[保有資格等]
AFP、税理士、商工会議所認定ビジネス法務エキスパート