前回、「1 創業融資とは」で「創業融資」とその種類についてお伝えしました。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。経営は情報戦です。
創業融資に関していえば「審査基準」を知ることが、融資の勝敗を分けるといってもいいでしょう。
ところが、審査基準について知る機会もないまま勢いに任せて突撃していって惨敗してしまう「イタイ失敗事例」が数多く発生しています。基本的に創業融資は一発勝負の厳しい世界。敗者復活戦はありません。
一度審査に落ちてしまったら、事業内容や経営体制などに余程の変更がない限り、再審査はありえないのです。まずはそこを覚悟してくださいね。
創業融資の審査基準となる「4つのポイント」
皆さんはどんな業種で独立開業を検討していますか?
仕入れを伴わない商材の代理店だとしたら、人件費や携帯電話、PCなどがあれば、すぐにでも始められますよね。
一方、飲食店など店舗系の場合、開業するにはかなりのお金がかかります。
物件取得費用、内装、給排水電気設備工事費、看板、人件費、仕入れ、広告宣伝費…などがあげられます。
まず、目指す業種で開業する際にかかる「お金の総額」をイメージしてみましょう。
創業融資でおさえておくべき基本、それは「審査基準となる4つのポイント」。
1.自己資金
2.経験・能力
3.返済可能性
4.資金使途 です。
今回はその中の1つ「自己資金割合」についてお話をします。
「自己資金割合」とは
創業融資の審査では「全体でかかる総額」のうち、自己資金(借入れ以外に自分で用意した初期資金)をどれだけ用意したかという「自己資金割合」という考え方があります。
自己資金とは、借入れ以外に自分で用意するお金のこと。
融資審査をクリアするには、「事業全体でかかるお金の総額」のうち、自己資金をどれだけ用意したかという「自己資金割合」を満たしているかどうかが重要となります。
通常の経営での融資と創業融資との大きな違いがここにあるといってもいいでしょう。
そして、起業家がこの自己資金でつまずくケースが非常に多いのです。
融資審査における「自己資金割合」の基準
自己資金割合は日本政策金融公庫、自治体、それぞれで基準が異なります。
■日本政策金融公庫の「新創業融資制度」※の場合、1/3の自己資金割合が必要。
■自治体の創業融資の場合、場所により多少異なりますが、だいたいは1/2の自己資金割合が求められます。
※無担保無保証の創業融資制度
つまり「全体でかかるお金の総額」が1200万円だとしたら、日本政策金融公庫の新創業融資では400万円、自治体の創業融資だと600万円の自己資金を用意する必要があります。
まずは、手掛けたいビジネスで必要となるお金の総額と、自分で用意できる金額をイメージする。そうすれば、どちらを選べばよいかの基準となります。
自己資金を金融機関はどのようにチェックするか
自己資金は創業融資の審査の中でも特に重要な位置づけで、厳重なチェックがなされます。
まずは事業主個人の、「過去1年分の預金通帳」の提出を求められ、「蓄積」を確認します。
例えば、自己資金として300万円があると主張する場合、その300万円がどういう過程で貯まったのかを追います。
自己資金としてOKなパターン
○毎月の給料の手取りが30万円で、うち10万円をコツコツと貯めた
○退職金として300万円を受け取った
○生命保険を解約して解約返戻金として300万円の入金があった
○父親から300万円が振り込まれ、贈与されたものと確認できた
自己資金としてNGなパターン
○通帳上、現金300万円の入金があり、たんす預金として貯めたと主張した
○母親から300万円が振り込まれているが、これは借りたものと説明した
上記は、自己資金がネックで創業融資調達に失敗するときに多いパターンです。
つまり、
1)自己資金の出所があいまいで説明できない
2)自己資金といいながら、本当は誰かから借りたお金
という場合は、チェックに引っ掛かり審査をパスできないのです。
【まとめ】
・創業融資の1つめのポイント「自己資金割合」の基準は融資によって異なる。
・「自己資金」は額だけではなく、出所や、自分のお金かどうかも審査されるため要注意。
次回は、審査項目「経験と能力」「返済の可能性」「資金使途」についてご紹介します。