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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第41回・2030年問題

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第41回・2030年問題

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

「2030年には日本の労働力は約644万人分足りなくなる」というデータがあります。現在も既に人手不足が言われていますが、この先、その深刻さはどんどん増していき、特にコンビニ、飲食店、介護などの現場で働く若者の労働力不足が深刻になるだろうと考えられています。一方で、そうした人手不足をある労働力がちゃんと埋めてくれるのではないかと期待されているのですが、さて、いったい「何」が埋めてくれるのでしょうか。

今回は、最近の政治の動きをチェックしている人であればあっさりと答えにたどり着けるかもしれません。分かった人は、せっかくなので「どういう背景からそうなるのか」についても考えてみてくださいね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

ここ最近、「10年後にはなくなっている仕事は何か」といった議論が盛んに行われています。そういったテーマの著書があるせいか、私もインタビューを受けることが増えています。

2030年に労働力が大きく足りなくなってしまうことは「2030年問題」と言われていて、そのための対策についてもいろいろと考えられているようです。

人口減少にともなう少子高齢化、生産年齢人口の減少という未来予測から、「ならば人がやらなくていい仕事は機械(AI)に任せてしまおう」という風潮があるのはご存じの通りです。これも1つの対策でしょう。

ただ、AIが得意なのは「頭脳労働」です。人間の仕事から頭脳労働を減らしてはくれるでしょうが、だからといって2030年に不足する若年労働力の問題は解消できません。同様に高齢者の労働は増加しますが、荷下ろしや配達、一日中の立ち仕事といった仕事を任せるのは難しいでしょう。ですから、今回のクイズの答えがAIや高齢者だと思った方は、残念ながら不正解です。

それでは解説します!

ここ最近の日本の労働市場を分析してみると、大きく増えているものがあります。それは「外国人労働者」の数です。

2008年には47万人ほどだったのが、2017年には128万人ほどにまで増えています。前年比18%増の伸び率で推移していて、届け出が義務化されて以来、過去最高値を更新したのだとか。内訳を見ても、技術研修生や専門・技術分野に限らず、ほとんどのカテゴリで増えています。

この背景には、ビザが取得できる範囲を広げるといった、入国管理法の改正を巡る動きがあるようです。厚生労働省が先回りしてこうした動きを見せているのは、方針をどんどん変えていかないと成り立たない状況になってしまっていることを物語っているわけですね。

そして、諸外国は日本のこうした動きを見て「ついに日本も移民大国になるのか」と言っているのだとか。

もちろん、シルバーや主婦の方々の労働力や、AIの導入についても大いに期待されています。しかし、本当に産業を回していくうえで必要となるような若い力が担う仕事は、それらでは到底埋まらないでしょう。となった時に、結局は外国人に頼ることになるわけです。今後も外国人労働者が増えていくのは間違いなさそうです。

年率10%増で推移していくだけでも、2030年には500万人ほどの外国人労働者が補充できる計算になります。年率18%増という今のペースのままでいけば、644万人という数字を埋めることは十分に可能でしょう。

今回のポイントは、このような未来を見越しておくことと、その時のために外国人を上手く雇って戦力にしていく方法をしっかり考えておいた方がいい、ということです。

外国人労働者は既にあちこちで大活躍している

実際に、生活の中で外国人労働者を見かける場面は増えていますよね。

これまでにもコンビニや飲食店などの接客業では韓国人や中国人が働く姿をよく見かけました。それが最近では、インド系やイスラム系の人も見かけることが多くなりました。名札を見ても、あきらかに外国人である人が増えているように感じませんか?

また、外国人労働者を取り入れる仕事の幅も広くなっていて、これまでに外国人があまりやっていなかった仕事にも広がりを見せ始めています。実際に外国人が寿司を握ってくれるお店は出始めていますし、先日はコールセンターの外国人オペレーターが日本語で丁寧に対応してくれました。

ベンチャー企業なんかでは、外国人を普通に新卒採用していますよね。ユニクロの首都圏にある大型店でも、外国人の接客スタッフを見かけることが増えてきました。だからといって彼らは人手不足だから雇われているわけではなく、外国人のお客に対応するためだけに存在しているわけでもなく、普通に将来の幹部候補になり得る主力メンバーです。日本で経験を積み、いずれは海外支社で力を発揮することを期待されているわけですね。

このように、日本国内における外国人労働者を取り巻く環境は、刻々と変化しています。もしかしたら、既に国の壁はなくなっているのかもしれない、そんなふうにも思えてきます。

経営者にとって「人材確保」は重要なテーマの1つ

ビジネスをしていくためには、労働力の確保は重要な課題の1つです。世の中がこのように急速に変化していく中では、外国人労働者をどう活用し、ビジネスを有利に進めていくかは考えておくべき重要なテーマです。

その時に、柔軟な発想で対応できることが、勝負の分かれ目になる可能性は多いにありそうです。少なくとも、既成の枠組みの中だけで判断するようなことをしていては、後れをとるだけではなく、ビジネスチャンスを逃すことにもつながりかねません。ぜひ、頭の片隅にでも置いておいてほしいと思います。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「外国人」でした。ちなみに、私の事務所がある新宿区大久保は、今やありとあらゆる国籍の人が集まる街になっています。駅貼りのポスターはいろんな国の言葉で書かれていて、日本人には読めないものがたくさんあります。移民大国化がさらに進めば、各地でこのような状況になるのかもしれませんね。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)。

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