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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第39回・機内食の量が減ると得をするのは誰か

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第39回・機内食の量が減ると得をするのは誰か

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

先日、出張でユナイテッド航空のエコノミークラスを久しぶりに利用したのですが、「機内食の量が昔に比べて少なくなっている」ということに気付きました。聞くところによると本当に少なくなっていて、かつての半分くらいの量だというのです。さて、なぜ少なくなったのでしょうか?

いろいろな理由が考えられそうですが、食事がサービスに含まれていないLCC(格安航空会社)のケースなども参考に、いろいろと想像してみて下さいね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

飛行機での旅の楽しみの1つに「機内食」がありますよね。航空会社によって少しずつですが特徴があったり、おなじみの「ビーフorチキン?」のように、選べる楽しみもあります。

しかし、おしなべて言えるのは、ものすごくおいしい料理ではないケースが多い、ということではないでしょうか?

あまり贅沢はいえませんが、そう思っている方は多いのではないかと思うのです。

それでは解説します!

機内食の量が、昔に比べて少なくなっています。最初はコスト削減なのかなと思ったりしたのですが、どうやら違うようです。

その答えが分かったのは、食事が終わって食器が下げられてから少しした頃でした。

周囲からやけにいい匂いがし始めました。そう、追加でホットミールを注文する人があちこちにいるんですね。

つまり、量が少ないのは、小食の人の量に合わせていて、「それでも足りない人は自分の好きなものを追加で頼んでね」ということなんです。しかも、追加のメニューはそれなりに充実していて、機内食よりもおいしそうなものが多そうです。ついつい匂いにつられて頼んでしまう人もいるでしょう。

今回のポイントは、少し言葉は悪いですが、そもそも評判がよくないものを改善するよりは、徹底的に悪くしてビジネスチャンスを広げた方がいい場合がある、ということです。

実際のところ、機内食には期待せず、空港で好きなものを食べてから飛行機に乗り込む人はたくさんいます。だったら、それを分かったうえで逆に突き抜けた方がいいだろう、というのがこのサービスが成り立っている理由だといえます。

つまり、評判のあまり良くないものをお腹いっぱい食べさせて、しかも他は何も売れないという誰も得しない状況を選ぶよりは、量を減らし、機内販売という選択肢を用意する方がビジネスとして賢明だということです。飛行機会社は堂々と販売できますし、利用客は好きな物を好きなだけ食べられるわけですから、双方にちゃんとメリットがあるのです。

評判の悪い「お通し」はどうすれば喜ばれるのか

似たような話では、ビジネスホテルの朝食の例が分かりやすいと思います。例えば、東横インは、他のビジネスホテルとは違って1階ロビー横にレストランを用意していません。そのかわりに、おにぎりなどの軽食が朝ご飯として無料でサービスされるのです。

わざわざ食事スペースを用意してビュッフェ料理を高く販売するくらいなら、グレードを下げていっそのこと無料にしてしまった方が、お互いに気楽なわけですよね。

ホテル側はいろいろな手間が省けるので、宿泊料金を下げることができます。利用客としたら無料で簡単な朝食が食べられればお得ですし、何より安く宿泊することができます。しかも、もっと食べたければ自由に好きな物を買って食べればいいわけで、普通に考えれば理にかなっていますよね。

居酒屋などで当たり前に出てくる「お通し」も同様です。頼んでもいないのに出てきて、しかもお金まで取られるこのシステムは、特に外国人に評判が悪いようです。それもあって、「じゃあもっと力を入れておいしいお通しを提供しよう」と考える居酒屋が多いのですが、実はそれは逆だと思います。

つまり、お通しを廃止すればよいのです。そうすれば、その分お客はもう一品多く注文するからです。実際に人気の居酒屋チェーン「旬鮮酒場 天狗」では3年ほど前から全店でお通しを廃止しており、それによって二次会利用の客が増えるなどの効果があったようです。

サービスの本質を見極め、無駄を省くことも大切

「10分1000円」でおなじみのヘアカット専門店「QBハウス」ですが、実はあのビジネス、経営コンサルタントの大前研一氏が著書で紹介したビジネスモデルを参考にしたと言われています。

大前氏が著書で書いた内容を簡単に紹介すると、床屋のサービスは「本質的なサービス(髪を切る)」と「付随のあってもなくてもいいサービス(シャンプーやマッサージなど)」に分けられ、タイムイズマネーの観点から言うと、付随のサービスはいずれ消えてなくなるのではないか…という話でした。

余計な物を省いて髪だけを安く切る、というQBハウスのビジネスが成功しているのは言わずもがな。「余計な部分に力を注がず、ビジネスを大きくする」という意味では、これも今回のテーマと似た話ですよね。

ぜひ皆さんも、いろいろなサービスに触れて、もっといい方法でビジネスチャンスを広げられないかを、あれこれ考えてみて下さいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「わざと量を少なくして追加で食べられるメニューを充実させている」でした。ちなみに、「追加のメニュー」は座席ポケットに入っている機内誌の中に英語で記載されているだけのようです。もし私がマーケティングオフィサーなら、いろんな国の言葉のメニューを作って、もっと堂々と入れるのになあと思ってしまいました(笑)


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)。

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