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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第37回・「コスト削減」のインパクト

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第37回・「コスト削減」のインパクト

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

1つ3万円するゴミ箱が売れているそうです。買っていくお客さんの大半は法人で、購入する理由のほとんどが「年間で8万円もコスト削減ができるから」ということだそうです。さて、このゴミ箱にはいったいどのような特徴があるのでしょうか?

ヒントは、購入するのが「法人」だというところです。法人×ゴミという図式から見えてくるものは何でしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

ゴミ箱の価格について特に詳しいわけではありませんが、3万円もするゴミ箱を、普通の人はなかなか買わないのではないでしょうか。選択肢がたくさんありますし、そこまでお金を出さなくても十分にいいものが買えるはずだからです。

しかし、特別な機能が搭載されていたり、それがあることで何かが格段に便利になったりする場合は例外かもしれません。

今回取り上げたゴミ箱は、イギリスのキッチン用品ブランド「Joseph Joseph」が発売している「クラッシュボックス」という商品です。クラッシュボックス、何やら意味深な名前ですね。

それでは解説します!

一般家庭ではなく、事業所がゴミを捨てる場合は「事業ゴミ」という扱いになります。

事業ゴミは許可業者が適正に処理することが義務付けられていて、業者がゴミを運ぶための料金と、自治体がゴミを処理するための料金を「ゴミ処理手数料」として支払ったうえで捨てなくてはいけません。

東京都の場合は45リットルの袋1つで342円の手数料がかかります。ただし、袋の数が問題であって、一袋の重さやゴミの量は問われないのがポイントです。つまり、入るだけ入れてしまえば1回分の手数料ですみます。

今回取り上げたこのゴミ箱、付いているレバーをぎゅっと押し込むことで、ゴミ箱の中のゴミを約3分の1に圧縮できてしまいます。つまり、このゴミ箱を使えばゴミの量を3分の1に減らすことができ、捨てる回数を減らすことができるというわけです。

たとえば毎日1袋のゴミを捨てていた事業者が、3日で1袋にした場合、年間の節約額は8万円にもなります。実際にニュースでは、このゴミ箱を使って幼稚園の紙ゴミや美容室の髪の毛などのゴミが3分の1になったという事例をテレビで紹介していました。

だから、3万円もするゴミ箱なのに、飛ぶように売れているんだそうです。

コストが下げられる商品は、高くても売れる

3万円という額だけを考えれば、確かに高いですよね。しかし、うまく使うことで年間8万円もコスト削減できれば、高いどころかかなりお得な商品だといえます。今回のポイントは、「コストが下げられる商品は高くても売れる」という点です。

分かりやすいのは、ITのソフトウエアでしょう。導入することによって業務が簡単になったり、仕事量が減るため、今やいろいろな業務ソフトが当たり前のように使われています。たとえば「弥生会計」という会計ソフトがありますが、あのソフトもそれなりの機能を使おうとすると結構な金額がかかります。しかし、税理士を雇って仕事を頼むことを考えたら格段に安いわけです。

とはいえ、多くのIT企業が既にそういうところに目をつけているわけで、今から新しいことをやろうと思ってもなかなか難しいのが現実です。でも、このゴミ箱のように、身近なところでも可能性を秘めている領域はまだまだありそうです。

たとえば、インクジェットプリンターの詰め替えインクの例があります。詰め替えるという発想でコスト削減を促し、さらに詰め替えの手間を省くためにチューブ式の補充タンクを作って成長した会社がありました。コスト削減ができる点が評価されて会社自体が大きくなった例でしょう。しかも、作った商品があまりにもいいものだったため、大手のメーカーにマネされてしまうというオチまでつきました。

もう1つ、オフィスの例でいうと、ホチキス付きのコピー機は、ホチキスのメーカーが「うちの商品を使ってもらおう」と考えて開発したものだと言われています。ホチキスそのものは安いものですが、実際のオフィスではホチキスをとめるための人件費がかかっていることに着目したわけです。だからこそ、多くのオフィスでは多少高くてもホチキス付きのコピー機が導入されているというわけですね。

コスト削減に対する意識はまだまだ高い。チャンスは確実にある!

コストが削減できるという話は、一見わかりにくい部分もありますが、ちゃんと考えてみればかなりのインパクトがあるというわけです。LED電球も、電球そのものは高いですが、白熱電球に比べて消費電力が5分の1程度、寿命も約40倍と、圧倒的におトクになります。あらゆる場所の電球がLED電球に切り替わっているのも納得です。

今回は事業者向けという観点から、オフィスの中でできそうなコスト削減の話をいくつか紹介しました。他にもできそうなことはまだまだあると思います。ゴミ箱が売れているという点からも、コスト削減に対する意識の高さははっきりしています。ぜひ、ビジネスチャンスだと捉えて、いろいろと発想してみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「ゴミを3分の1の量に圧縮できる」でした。ちなみにですが、私は3万円のゴミ箱を買うのをケチって、電子化して不要になった本や雑誌の重さを利用して、ゴミの量を圧縮する作戦をとっています(笑)


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)。

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