竹内志朗さん(84歳)
VOL.211あの人気番組のタイトル文字も。今なお手描き一筋の舞台装置家
自分の仕事に納得するまで
飽きるということはありません
20代より今のほうが忙しいです。去年は舞台装置の仕事が20数本。手書き文字は、もう数えません。注文が来たら断る方法がないんですよ。ハイハイと引き受けて、後でこれどないしよと思う。でも、寝ないでやったらできるやろというのが僕の主義です。こないだも42時間ぶっ通しで3本の舞台デザインを仕上げました。
舞台の仕事ではいつ食えるようになるかわからないということで、テレビの手書き文字の仕事を始めたわけです。昔はニュース速報も全部手書き。多いと一晩で1500枚書きました。それから番組のタイトル文字。企画を聞いて浮かんだイメージを形にします。例えば「探偵!ナイトスクープ」。ナイトは夜やと思われてますが本当は騎士のナイト。だからタイトル文字もカチーッとした文字にした。コンピュータが出てくると手書きの文字は消えていきましたが、かわりに舞台の仕事がどんどん増えた。僕には願ったりです。
仕事が早いと言われますが、僕の仕事はギリギリではあかんのです。締め切り前に完成させてから冷静に見直す時間が欲しい。これじゃいかんと思たら全部書き直します。「剣客商売」の文字は500枚書きました。それに、自分が納得する文字が出てくるまでは飽きません。これで終わろうかな思ても、ここのハネがちゃうと思ったら、もういっぺん。楽しいですねぇ。
撮影/刑部友康、阪巻正志
アントレ2018.春号 「平均年齢81歳、『働く』を楽しむ 稼ぐ! 老後天国」より