荒井潤一さん(61歳)
VOL.218画像処理ソフトの受託開発などを手がけるITベンチャー
「絶対いける」で傷を広げた。
マーケットインのもの作りで再起
かつて創業した3DCGの会社では、ブラウザで製品画像を3次元表示するソフトを展開していました。ウェブ上のカタログに応用できると期待しましたが、これが完全な見込み違い。当時のPCのスペックが足りなかったせいもありますが、今になっても普及していないということは、結局ニーズがなかったのでしょう。なのに私は「絶対いける」と思い込んで8年も粘った。それで借金が膨らみ、会社は倒産。再起を図ってもう1度起業しましたが、結論からいうと今のところ成功とはいえません。
2度の失敗を経て分かったのは、私は理屈に固執するということです。「こうだから売れる」と思い込み、芽のないアイデアも見切りをつけられない。捨てられない性格なんです。でも倒産という形で自分のやってきたことが間違いだとわかった。これまで得たものや開発したもの、人間関係も捨てることが再起のスタートです。開発の方法も見直しました。以前はサービスを作ってからお客さんを集めるという順番でしたが、本来はお客さんを見つけてからサービス化という順番であるべき。今は無料サービスを発信し、お客さんの声を集めているところです。これだけの経験を積めばさすがに「ここに餌を投げれば食いつくぞ」というのは分かるようになりました(笑)。もう失敗を繰り返さずに済みそうです。
撮影/刑部友康、片桐圭、阪巻正志、宮田昌彦
アントレ2018.夏号 「やっちまった」も財産だ 起業家7人の ザ・失敗より