「その条件は飲めないな…」
「今日は飲み会に行きたくないな…」
商談から飲み会まで、あらゆる場面で必要となる「断る力」。
断ると言っても、ただ単に「NO」とだけ伝えたら、それはそれで角が立ってしまいますし、なかなか難しいですよね。
基本的に全てを自分でやらなければならない、独立・起業を考えるなら、なおさら身につけたい力ですよね。
独立に役立つ心理学シリーズ、今回内藤先生にお伺いしたのは「断る力」。
可能な限り相手に嫌われずに断るための、心理テクニックについて解説をしていただきました。
上手な断り方とは、直接的に「NO」を伝えることではない
今回のテーマである「断る力」。
世界的に見ても、日本人は「NO」と言えない、「断りベタ」だと言われています。
その奥に隠されているのは「断りたいけど、嫌われたくない」という心理でしょう。
今回お話しするのはまさに「嫌われずに断る方法」です。
まず結論から申し上げると、嫌われずに断りたいなら、断ってはいけません。すなわち、直接的に「NO」と伝えてはならないのです。
なぜなら自分の要望を拒絶されて、気分のいい人はいないからです。
とはいえ断りたいことを断れずにいたら、自分ばかりが損をしてしまいますよね。
そこで、断ってはいない(=NOと直接的に伝えていない)けれど、結果として拒絶する方法をお教えします。
まずはなぜ拒絶することがいけないのか、をデータと共に見ていきましょう。
「拒絶」ではなく、「交渉・提案」を上手く使う
ノースカロライナ大学のベネット・テッパー氏は、企業に勤める347名の上司・マネジャーを対象に、調査を行いました。
「どのような部下と仕事をしたくないか?」という質問を投げかけると、「拒絶」「拒否」の反応を示す人とは一緒に仕事をしたくない、という結果になりました。
一方「ではどのような部下を可愛がりたいか?」という質問をした結果、投げかけた要望に自分なりに考えて「提案」できる人や、要望を一旦受け入れた上で「交渉」をしてくる人を可愛がりたいと思う、という意見が多く見られました。
「拒絶」や「拒否」は相手を不快にするケースが多く、「交渉」や「提案」をする人に対しては好感を持ちやすいということが、この調査から分かったのです。
もうお分かりですね、上手な断り方とは「NO」を直接伝えることではありません。
上手な断り方とは、向こうが勝手に諦めてくれる条件を提示すること
では最後に、直接的に「NO」を伝えない、上手な断り方をご紹介しましょう。
ちょっと嫌な仕事を頼まれた場合、
「分かりました、ただし納期は◯日まで待っていただけませんか?」
「分かりました、しかし今◯◯の案件にリソースも割かないといけないので、部下を◯人つけていただけませんか?」
個人事業主の場合は、
「ぜひお引き受けしたいのですが、あいにく◯◯円以上でないとお受けすることができませんので、単価だけ再度ご検討していただけませんか?」
といったように「納期の時期」や「人員」、「単価の金額」を引き合いに出すと良いでしょう。
もし相手があなたに本当にお願いしたい場合は、その交渉の条件を飲んでくれるでしょうし、難しければ「じゃあ他の人にお任せします」と向こうから話をなかったことにしてくる可能性もあります。
少し苦手な相手からの飲み会のお誘いも、
「今日ならどうですか? 向こう1カ月のスケジュールが埋まってしまっているので、今日でないとずいぶん先になってしまいます。」
「分かりました。ただ今ダイエット中なので、夜ではなく昼にランチをご一緒する、というのはどうでしょう?」
相手にもよりますが、要望を受け入れた上で条件をつけて交渉すると、大抵は受け入れてくれるのではないでしょうか?
大切なのは「ダメです」や「難しい」という言葉を使わずに、あくまで提案・交渉の形で相手が勝手に諦めてくれる形を取ること。
「断りベタ」と言われる日本人にとってこの形は、おそらく最善の方法なのではないかと思っています。
上手な断り方を身につけて、自分の身を守れる独立・起業を目指してみてください。
心理学者。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。
大学院在学中より専門の心理学を活かした執筆活動を開始し、卒業後に有限会社アンギルドを設立。
ビジネス心理学を実践的に応用するアドバイスには定評がある。
新刊に、「ベンジャミン・フランクリンの心理法則」(ぱる出版)
「図解 身近にあふれる『心理学』が3時間でわかる本」(明日香出版社)など。
講演会・セミナーの依頼は、システムブレーンまで。
システムブレーン(講演・セミナー情報問い合わせ先)
http://www.sbrain.co.jp/