会社員生活とは大きく異なる、独立・起業。
イレギュラーなことが起こると、どうしてもうろたえてしまうのが人間の性分ですが、起こること全てにいちいち一喜一憂していたら、身が持ちません。
独立に役立つ心理学シリーズ、今回内藤先生に伺ったのは、独立に役立つ「図太い神経」の作り方。
「図太い神経」を持っていることのメリットを心理学の実験データで解説していただくとともに、その神経をどう養っていけばいいのかをお聞きしました。
「図太い神経」とは、病気における「免疫」である
今回のテーマは「図太い神経」の作り方。
会社から独立して経営者になるということは、お客さまの良い評価も悪い評価も、成功も失敗も、アクシデントやトラブルも、全て自分に降り掛かってくるということです。
成功はともかく、失敗が続いて気を病んでしまうと、経営そのものが立ち行かなくなってしまうことも考えられます。
そこで多少の失敗では動じない、一定の「図太い神経」が必要になるわけですが、この「図太い神経」とは、病気における「免疫」と言い換えられます。
免疫とは、体内に病原菌や毒素などが侵入しても、それに抵抗して打ち勝つ能力のこと。
その性質を上手く活用して取り入れられているのが、花粉症対策などで用いられる免疫療法。
アレルギーを引き起こす微量のアレルゲン(花粉)を体に入れて、抵抗力を強めておくという方法です。
「図太い神経」を手に入れるためにも、この免疫療法と同じことをするのが概ね正しいと言えます。
「喧嘩するほど仲がいい」のはホント?
ここで、テキサス大学のリサ・ネフ博士が行ったデータをご紹介しましょう。
ネフ博士は、61組の新婚夫婦を対象に、結婚して数ヶ月間の間にどれくらい夫婦喧嘩をしたのかを調査しました。
その結果、最も仲良く結婚生活を長く続けられたのは「結婚して数ヶ月で中程度の衝突を何度か経験していた夫婦」であることが分かりました。
そこそこの喧嘩を繰り返していた夫婦は、喧嘩をした経験、そしてそれと同じ数の仲直りをした経験を積んでいるので、「喧嘩に対する免疫がついていた」と考えられるのです。
逆にほぼ喧嘩をしなかった夫婦は「喧嘩をした時の仲直りの仕方」を十分に学習しておらず、大きな喧嘩をした時に破局してしまうケースが多くありました。
つまり「喧嘩するほど仲が良い」というのは、喧嘩する2人が「喧嘩の仕方」も「喧嘩の解決の方法」も十分熟知しているから、とも言い換えられるのです。
体育会系の人が強いのは、「負け」から這い上がった経験が豊富だから
ここまでご紹介したお話やデータをまとめると、「図太い神経」を手に入れるには、失敗の経験を数多くするしかありません。
昔から「学生時代に体育会系だった人は就職に強い」「体育会系出身の人は出世する」と言われることがありますが、なぜだか分かりますか?
もちろん部活で養った礼儀正しさや謙虚な姿勢なども、就職や出世する理由として挙げられますが、1番の大きな理由は「トライアンドエラーの経験数」にあると、私は思っています。
スポーツをはじめとする、勝ち負けの世界を経験してきた人にとって「負ける」という経験は、ほぼ全ての人が通ってきた通過儀礼でしょう。
負けから這い上がり「どうしたら勝てるのか」と、「次に勝つための思考」を止めない。
その思考の癖がついている割合が多いのが、体育会系出身者である、というわけです。
自分の意見を通すことが怖いなら、小さいことからでも自分の意思を発して、それを通していく。もしうまくいかなかったら、どうすればその意見が通るのかを考える。
もちろん免疫がないのにもかかわらず、最初からリスクの大きなことを実行する必要はありません。
まずは自分にあったレベルからで結構ですので「免疫をつけたい事柄」に挑戦してみてください。
きちんと免疫がついていれば、自然と打たれ強く「図太い神経」を持てるようになるはずです。
・成功する企画は「常識外れ」が多い【独立に役立つ心理学・第11弾】
心理学者。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。
大学院在学中より専門の心理学を活かした執筆活動を開始し、卒業後に有限会社アンギルドを設立。
ビジネス心理学を実践的に応用するアドバイスには定評がある。
新刊に、「ベンジャミン・フランクリンの心理法則」(ぱる出版)
「図解 身近にあふれる『心理学』が3時間でわかる本」(明日香出版社)など。
講演会・セミナーの依頼は、システムブレーンまで。
システムブレーン(講演・セミナー情報問い合わせ先)
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