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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第31回・日本に来る外国人

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第31回・日本に来る外国人

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

東京駅の八重洲地下街などには、日本各地のお土産を扱うお店が増えています。その中でも、訪日外国人向けに多くの商品を扱うようなお店では、外国語で書かれたPOPも目立つようになっています。英語、中国語、韓国語が多いのですが、ではその次に多いのはいったいどこの国の言葉でしょうか?

これは、どの地域・国から来る外国人が多いかを考えていけば、自ずと見えてくるかもしれませんね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

2020年のオリンピックを前に、訪日外国人が年々増え始めています。既に多くの観光地では、いろいろな国から訪れた訪日外国人で溢れかえっています。外国人観光客を迎え入れる準備が着々と進んでいるのを実感する場面も多くなりました。

中でも人気なのが、渋谷のスクランブル交差点です。信号が変わるたびに、カメラを持って写真を撮る外国人が非常に多くなっているのを、実際に見た人もいるのではないでしょうか。

この連載でも、そうした訪日外国人に向けたサービスの可能性について取り上げてきました。国をあげて彼らを歓迎する取り組みが進んでいる以上、そこにビジネスチャンスがあるのは当然だからです。

それでは解説します!

一括りに「訪日外国人」と言ってしまっていますが、実際にどの国からやってくる人が多いのか、考えたことはありますか?

そこで、日本政府観光局(JNTO)が調査した、2018年4月に日本を訪れた外国人の数を国別で見てみることにします。

最も多いのが中国(68万3400人)、次いで韓国(63万8500人)、台湾(47万人)。これがトップ3です。以下、香港(17万9900人)、タイ(14万8600人)、米国(14万7000人)、フィリピン(6万3900人)、オーストラリア(5万7400人)という順番になっています。※2018年4月訪日外客数(JNTO推計値)より

では、これらの国々を使用する言語で整理してみます。「英語圏」は米国、フィリピン、オーストラリア。「中国語圏」は中国、台湾、香港。そして「韓国語圏」は韓国。さらにそれに続くのが、統計上で上位に入ってくる「タイ語」となります。

つまり、英語、中国語、韓国語に加えてタイ語をカバーしておけば、多くの訪日外国人へのPRが十分に可能だということです。統計で見るとそのようなことがわかりますし、実際にタイ語で書かれたPOPを見かけることも増えています。

「訪日外国人」と一括りにしてしまうことの危険性

個人的には、訪日タイ人が多いことは少し意外でした。確かに日本人にとってタイは身近な国の1つです。だからこそ、日本からタイに旅行する人が多いというイメージを持っており、逆に多くのタイ人が日本を訪れていることに驚いたのです。

ここで1つ考えられるのは、タイ人とは認識しておらず、「東南アジアの人たち」というように一括りにしてしまっている人が実は多いのではないか、ということです。となった時に、我々の「おもてなし」は実は正しくできていたのか、という疑問が生じてきます。

たとえば日本人が海外に旅行した時に、宿泊先などでお米が用意してあると嬉しかったりしますよね。でも、その横にザーサイやキムチが置いてあると、「ちょっと違うんだよな」という気持ちになったりしませんか? 「やっぱりタクワンがあってほしいなあ」と思うはずなんです。

日本人のおもてなしは、世界中から高く評価されています。だからこそ、本気でおもてなしをしたいと思うのであれば、それは「外国人」と一括りにせず、中国人、韓国人、タイ人…というように、相手のことをきちんと捉えておく必要があるわけです。

ですから、そもそも自分のお店に来ているお客がどこの国の人なのか、何をされると嬉しいのかは、ちゃんと知っておかなくてはいけません。

1つ例をあげると、タイ人は抹茶の味を非常に好むと言われています。だからお茶を点てて飲むことに関心があるだけでなく、日本の抹茶味のお菓子をお土産にあげると非常に喜ぶのだとか。一方で、アメリカ人は抹茶に対して苦手意識を持つ人が多いといいます。どうやらミルクシェイクを飲むような感覚で、「甘くておいしそう」というイメージで口にする人が多く、実際の抹茶の苦さに触れて怒り出す人もいるのだとか。

抹茶の例を1つとっただけでも、相手によって全然違うことがお分かりいただけると思います。

喜ばれる「おもてなし」は相手によって違う

以前、大阪のあるお寿司屋さんが韓国人旅行客にわさびをたくさん入れたお寿司を出して問題となったニュースがありました。

もちろん真相はわかりませんが、実は大阪の商工会議所では「中国人の観光客はわさびを好むため、多めに入れると喜ぶ」というおもてなしの仕方について話をしていたという説があります。もしそれが本当なら、もしかしたらそのお店はおもてなしの気持ちでわさびをたっぷり入れた可能性もあるわけです。ただ、韓国人はわさびを苦手にする人が多いようで、その結果、あのようなことになったとも考えられます。

これはあくまで真実ではないかもしれませんが、対象の訪日外国人を一括りに捉えていれば、再び起こり得ることかもしれません。せっかくおもてなしの気持ちがあったとしても、それが伝わらない可能性を含んでいるということです。

ぜひ、自分のお店を利用する人がどこの国の人なのかを、把握してみてください。そして彼らに見合ったおもてなしの方法を考えておくことが、これからの時代に必要なのではないでしょうか。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「タイ」でした。タイ人が抹茶を好む1つの理由に、香りを楽しんでいるという話があるそうです。今やタイには抹茶を扱ういろいろなお店があるのだとか。そういうところから日本に興味を持ち、日本を訪れるタイ人が増えているのかもしれませんね。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』 (講談社+α新書)。

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