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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第29回・できるだけシンプルに

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第29回・できるだけシンプルに

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

2020年の東京オリンピックに向けて、日本を訪れる外国人は増えていくことが予想されています。さて、訪日外国人に「日本滞在中に必要な情報」についてアンケートをとったところ、第3位が「飲食店」、第2位が「乗り換えなど交通案内」だったといいます。では、第1位は一体何だったのでしょうか?

皆さんが今、海外に行ったとして、知らないと困りそうなことは何なのか、想像してみれば答えは出てくるかもしれませんね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

今年の連休は暖かい日が多く、概ね天候に恵まれたこともあり、どこに出掛けてもたくさんの人でした。特に観光地や繁華街は、外国からの旅行客の姿が非常に多く見られたように思います。

2020年の東京オリンピックまで、気がついたらあと2年。年々増えている訪日外国人は、オリンピックの頃にはピークをむかえるでしょう。

せっかくのチャンスだからこそ、彼らをターゲットにしたビジネスの可能性について、もっと真剣に考えてもいいかもしれませんね。

それでは解説します!

海外と日本を比べた時に、圧倒的に日本の方が行き届いていない「インフラ」があると言われています。それは「無料Wi-Fi」です。

もちろん、あるところにはあります。交通機関やショップなどで見かけることも多いですし、実際に接続して使っている人もたくさんいるでしょう。

とはいえ、あらゆる場所で無料Wi-Fiが気軽に使える海外と比べると、非常に分かりにくいというのが実情のようです。そして、そうした声は訪日外国人からも聞こえてきます。

彼らが格安SIMを手に入れるまでの期間は特に、「どこに行けば無料Wi-Fiが使えるのか」は気になることの1つであり、実際に滞在中の困りごとになっているようです。

日本で生活していても、無料Wi-Fiの使いにくさを感じることは多いのではないでしょうか。たとえば、利用したことがあるWi-Fiスポットに近づくと自動的に画面が切り替わり、ログインを求められることもしょっちゅうです。毎回、メールアドレスやパスワードの記入が必要になったりと、とにかく面倒で使いにくい。

そして、これは当然、訪日外国人も同様に感じているはずです。

世の中のあらゆることが「シンプル」に向かっている

毎回ログインを求められたり、パスワードの変更についての警告がなされる日本の無料Wi-Fi事情。

一方で、ペースメーカーへの影響は実は少ないことが分かったために、電車内では電源を切らなくてもよくなりました。今は「マナーの問題」として、通話はひかえるようアナウンスする方向に変わっていますよね。

また、総務省が「パスワードは頻繁に変える方が逆に危険」と発表するなど、携帯電話やIT機器を取り巻くセキュリティーの問題は、少しずつ変わり始めました。

その流れでいえば、理にかなっていないことを強制されているのが無料Wi-Fiであり、それが使いにくさを助長しているともいえるでしょう。もっとシンプルになる必要がある、そう思えてなりません。実際のところ、訪日外国人の方々もシンプルな方が使いやすいはずです。

世の中は「シンプル」に向かっているのは間違いなく、ビジネスによっては、シンプルがゆえに多くの人から支持を得ているものもたくさんあります。

たとえば、街でよく見かける「丸亀製麺」。たくさんのメニューがあっていろいろ選べるのが魅力ですが、よく見てみると「うどんの種類(釜揚げ、釜玉、かけ など)」×「サイズ(得・大・並)」×「トッピング」という非常にシンプルな構造になっているわけです。

牛丼の「すき家」もそう。競合に比べてメニューのバリエーションが多いですが、「ご飯に乗せる」を基本に、様々な具材の組み合わせで選べるシンプルさが人気の秘訣でしょう。

シンプルといえば「均一ビジネス」も忘れてはいけませんよね。「100円ショップ」はもちろん、ヘアカット専門店「QBハウス」なども価格設定が分かりやすくて好評のようです。飲食店でいえば、全品が均一価格の「鳥貴族」も人気です。

これらのお店は外国人利用客も多く、とても賑わっています。「シンプルでわかりやすいから」というのが、大きな理由の1つで間違いないでしょう。

シンプルなものは訪日外国人にもわかりやすく、受けがいい

今後、2020年に向けて訪日外国人はますます増えていきます。商売として彼らにアピールし、心をつかんでお客として取り込んでいくためには、「シンプルで分かりやすい」というのは1つの重要なキーワードになるはずです。

今あるものをシンプル化するという発想で見てみるだけでも、商売繁盛のヒントが得られるかもしれません。ユーザーの目線に立ち、何がシンプルだと利用しやすいのかを考えてみるのもいいでしょう。

ぜひ、頭の体操のつもりでやってみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「無料Wi-Fi」でした。ちなみに、日本で無料Wi-Fiが普及しない理由の1つに、「Wi-Fiそのもののセキュリティー面における脆弱性」がいわれています。なりすましができてしまうので、逆に危険だという声もあるようですが、その話はまた別の機会にしましょう。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』 (講談社+α新書)。

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