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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第27回・周辺市場を攻める

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第27回・周辺市場を攻める

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

ヒット商品を次々に生み出す最近のコンビニですが、今、密かに話題となっているのが「サラダチキン」です。鶏のムネ肉を茹でて味付けしたもののことで、コンビニによってはサラダコーナーのかなりのスペースを占めています。それだけ売れ筋商品であるということなのですが、実はこのサラダチキン、ある有名なテレビCMがきっかけでヒットしたと言われています。さて、それは何のCMでしょうか?

そのCMで食べているところが放送されているわけではなく、しかも食べ物のCMでもありません。「サラダチキンが必要になる」という観点で考えてみてくださいね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

コンビニは棚のスペースの都合上、置ける商品が限られることから、メーカー各社はその確保にしのぎを削っています。一方で、その商品が売れるとわかると、自ずと売り場は拡大します。

最近、売り場が一気に拡大して一部で話題となっているのが「サラダチキン」です。

鶏のムネ肉を茹でて味付けしたもので、元々はサラダなどの料理にトッピングするためのお手軽食材としてスーパーなどで取り扱われ始めました。

それが、気がついたら単体で1つの食事の選択肢として販売されるようになったのです。味のバリエーションもいろいろと増え、コンビニのサラダコーナーでは、ひと際存在感を示しています。

それでは解説します!

このサラダチキンがコンビニで売れている背景には、「食事としてそのまま食べる」というニーズが高まっていることがあるようです。そして、その一番の理由は「ダイエット食」なのです。

インパクトのあるCMと「結果にコミットする。」のキャッチフレーズが有名な「RIZAP(ライザップ)」がここしばらく話題となっていますが、あのCMのような理想の体を作るために大事なのは、運動だけでなく、栄養の摂り方であるというのはよく知られたセオリーです。

実際にライザップをやっていない人でも、「炭水化物や糖分の摂取を減らし、良質なタンパク質を摂るような食事習慣をつくる」というメソッドを理解するようになり、多くの人が気軽に実践できるようになりました。

しかし、このような食事制限をしている人が外食先で何か食べようと思った時に、食べられるものがないのが現状です。ベジタリアン向けのメニューや、動物由来の食品を一切使わないビーガン料理といったものはあるにもかかわらず、炭水化物抜きのダイエットメニューは実はあまり充実していません。

結果、コンビニで買って食べるしかない…となった時に、サラダチキンが注目されるようになったというわけです。

コンビニにあるダイエットメニューといえば、元々はサラダくらいしかありませんでした。そこでバリエーションとしてムネ肉を乗せたチキンのサラダを販売したところ、これがやけに売れるぞということで、ついにチキンだけを販売し始めた…という経緯なんだとか。

これだけでも、1つのビジネスチャンスをつかむ例として、大いに参考になります。

大きなマーケットができた時こそ、周辺の「関連市場」に注目してみる

ライザップをやっていない人であっても、今やどういうものかは多くの人が知っています。同じ方式でダイエットをしている人もたくさんいるでしょうから、ライザップは大きなマーケットを作ったといって間違いありません。

今回のポイントは、大きなマーケットができた時に、その周辺には「関連市場」ができるということ。ライザップがヒットしたことで、ダイエットや食事の習慣に対する関心が高まりましたし、食べ物として鶏のムネ肉にもあらためて脚光が当たり始めています。

何かヒット商品が出た時に、流行っているな、うらやましいなと思ってただ見ているだけでは何もつかめません。周りのどこかにチャンスがないか、目をつけてみるのは大事なことです。

関連市場の例で分かりやすいのは、車や携帯電話の話でしょう。たとえば自動車を1台購入して5年間乗ったとして、実はその5年間の間には、車両代と同じくらいの額をオイルやグッズなど周辺のものにも使っていると言われています。

携帯電話も同様です。本体を買ったら、ケースや保護シート、ケーブルや充電器など関連グッズにもお金を使いますよね。周辺機器の売り場が充実していることからも、その市場がいかに大きいかお分かりいただけるはずです。

関連市場が生み出すビジネスチャンスはバカにならない

何かヒット商品が生まれた時に、その周辺市場を狙うというのは、起業家としてとても正しい思考法です。巨大なマーケットを作り出そうと大きな戦いに挑むのも大事なことですが、ビジネスチャンスはそこ以外にもあるんだということを頭に入れておけば、チャンスはつかみやすくなると思います。

それでいうと、今回紹介したライザップが作ったマーケットについては、まだコンビニしか拾えていません。たとえば外食でダイエットメニューを提供するといったビジネスは、まだまだチャンスがあるように思えますが、いかがでしょうか?

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「ライザップ」でした。ライザップは数カ月から長くて半年程度続けるようですが、大事なのはそこで作り上げた体を維持するためには、食事に気を使い続けるという点です。つまり、ライザップをやめても、鶏のムネ肉は必要になり続けるわけですから、実はこちらのマーケットの方がデカいような気がしませんか?


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』 (講談社+α新書)。

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