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形を変えて生き残る? 江戸から昭和の「消えた職業」から学ぶ、ビジネスの本質

形を変えて生き残る? 江戸から昭和の「消えた職業」から学ぶ、ビジネスの本質

脱サラして独立・起業をする際は、できるだけ息の長い職業を選びたいもの。

しかし、昨今ではAIやテクノロジーの発達で将来的に消滅する職業が予想されるなど、職の興亡はさらに激しくなることが予想される。

実は、このような職業の入れ替わりは、歴史上何度も繰り返されてきたことだった。

今回は、明治・大正・昭和の1300の職業と詳細を綴った「近代日本職業辞典(松田良一著・柏書房)」から今は存在しない職業を紹介し、現代でも活かせる仕事のアイデアを提供したい。

日用品を修理する「鋳掛屋(いかけや)」や、季節ものの商売「お宝売り(おたからうり)」など、時代とともになくなってはいるものの、そのビジネスの本質は現代の商売に通じるものがあった。

時代は変わっても商いは人が行うもの。本や映画の古典を今でも楽しめるように、人の本質はそうそう変わるものではない。過去に存在した職業とそのエッセンスから、独立・起業のヒントを得ることができるだろう。

【修理】 エコ志向の今だから流行るかも? 「鋳掛屋(いかけや)」

リサイクルやリユースが当たり前になった昨今、職業として再び成り立つのでは? と思わせるのが鋳掛屋。

この職業は江戸時代から大正時代にかけて、町を回り、穴の開いた鍋や釜などを修理して回った職人だ。

今でこそ100円ショップで鍋が買える時代だが、江戸時代から大正時代にかけて鍋や釜はひとつひとつ手で作られ、日常的に使う煮炊きの道具だったので値が張るものだった。

「月夜に釜を抜かれる(明るい月夜に泥棒に釜を盗まれる、転じてひどく油断する意味)」ということわざがあったくらいなので、中古品でも売れば高い値が付いたのだろう。

このように高価な鍋や釜はおいそれと買い換えるわけにもいかず、修理をしながら大切に使われた。

鋳掛屋は路上で修理を行いながら、修理用の“ふいご”や“コテ”を道具箱に入れ、家から家に歩いて回ったという。

現代では、日頃よく使うものを修理する職の代表格として、スマホ修理屋がある。

割れた画面や液晶の修理は、おそらく誰もが1度は依頼したことがあるのではないだろうか。

このほか、出張自転車修理屋では、お店が閉まった深夜でも電話1本で駆けつけてくれ、パンクしたチューブなどを修理してくれるところもあるそう。

日用品を売るのではなく、修理する仕事はいつの時代も必要とされるのだろう。

【財産保護】江戸時代の簡易倉庫職人「穴蔵屋(あなぐらや)」

「穴蔵屋」とは、穴掘りを仕事にする職業である。

穴掘りが仕事になる、と聞くと少し奇妙に思わないだろうか?

しかし、江戸時代から明治時代にかけて、穴掘りが仕事になった時期があったのだ。

穴蔵屋が手がけたのは、穴蔵と呼ばれる地下倉庫。

これは商人が財産となる金銀を蓄えるために作られた簡易倉庫で、火事に強く、蔵を建てるよりも安く建てられたため、商人を中心に一定の需要があったという。

なぜこの職業に需要があったのかというと、江戸に火事が頻発したからだ。

「火事と喧嘩は江戸の華」と言われたように、建物が密集し、乾燥した気候の江戸では、大火事がよく起こった。

江戸時代には合計100あまりの大火が起き、2〜3年に一度、町を焼き尽くすような大火事が起きたという。

このように、自らの財産を守る商品はいつの時代でも高い需要がある。

東日本大震災以降、災害に対する自衛に注目が集まっている。
非常時に使う防災用品の販売や安否の確認サービスは多くの人が必要とするものではないだろうか。

【人材紹介】江戸時代の職業案内所「請宿(うけやど)」

現代では職を求める際に、求人サイトや転職エージェントなど様々な窓口が選べるが、明治から昭和にかけて人々はどのように就職先を求めていたのだろうか?

その窓口となっていたのが請宿だ。今でいうところの、職業案内所に近いと言っていいだろう。

請宿は、商家や武家の奉公人や下男・下女(雇い先に住み込みで働く男性や女性)などの仕事を、人々に紹介していた。

知り合いの口利きで仕事にありつくことも多かった当時は、このような職業案内所は重宝され、様々な人が請宿の敷居をまたいだという。

現代では公共の職安をはじめ、インターネットを見れば求職情報はよりどりみどり。

自分の余った時間を切り売りできるネットサービスも登場しているので、仕事に困ることは少ない。

仕事を求める人は多くても、個人では少し行いづらい仕事かもしれない。

【季節イベント】季節限定の縁起物商人、「お宝売り(おたからうり)」

お守りや酉の市の熊手などが飛ぶように売れていく様子を見ると、古くから人は、ついつい縁起物を買ってしまうものだと感じてしまう。

お宝売りとは、江戸時代から明治期にかけて繁盛した商売で、正月2日の夕方頃に「お宝〜、お宝〜」と声をあげて宝船が描かれた絵を売り歩いていたそうだ。

正月の夢は初夢と言って、1年の運勢を占う機会になっていた。

初夢で縁起のいい夢が見られるようにと、人々はお宝売りから宝船の絵を買い、枕の下に敷いていたそうだ。

これらの絵は、商家がお得意さまに新年の挨拶代わりに配ることもあり、とても人気があったという。

季節ものということもあり、稼げる時期が限られているが、東京ではクリスマス限定で出張サンタ「東京サンタクル」というサービスが提供されている。

ハロウィンなら衣装の貸し出しサービスや出張おばけ、お正月ならレンタルの門松貸し出しサービスなど、アイデア次第で季節のイベントはビジネスチャンスになるだろう。

【自分だけが持ち得るスキル】活動写真時代に活躍した「映画弁士(えいがべんし)」

3D映画が当たり前のように見られるようになり、最近ではにおいや振動まで体験できる4Dも登場した映画だが、登場した当初は映像だけが流されていたことをご存じだろうか?

映画弁士は、「活動写真」と呼ばれた音声のない映画(映像)に、声や効果音をあてた仕事だ。

弁士は映画の登場人物のセリフだけでなく、筋書きの説明などもこなし、最盛期は複数の弁士がそれぞれの登場人物のセリフを受け持っていた。

映写技術の発達でこの仕事は激減したが、今でも弁士の技術を持つ人がいて、無声映画に声を当てるイベントなどで活躍しているという。

SNSが一般的になった現代において、特殊なスキルは注目されやすい。

最盛期の弁士ように、大きな需要はないかもしれないが、自ら固有のスキルを持っていれば珍しがられてイベントなどで活躍できるだろう。

自分だけのスキルは、どんどんアピールしていきたいところだ。

時代や職種が変わっても、商いの基本は同じ

仕事は日々の糧を得るだけでなく、それを通して地域や社会と繋がるためにある。

もしお金のなる木が手元にあって、金銭的に困らなくても、仕事がなければきっと毎日は退屈になってしまうに違いない。

ご紹介したように、今は存在しない仕事の中には「日用品を修理する」「防災意識に働きかける」「季節のイベントにまつわる品を売る」など、商いのエッセンスが詰まっていた。

時代が変わり職種がなくなっても、根本的なコツをつかめば現代に応用できることも多い。

独立・起業を考える上で役立つのではないだろうか。

とはいえ、好きな仕事はなるべく長く続けたい。成功例や失敗談など情報をできるだけ多く集めて、順風満帆な事業にしていきたいものだ。

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取材・文 鈴木雅矩(すずきがく)ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。
帰国後はライター・編集者として活動中。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。

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