小津智一さん(45歳)
高校卒業後、大手石油化学メーカーに就職。2006年に長女が誕生したのを機に脱サラ。
福岡県、長崎県に6カ所の企業内保育所を運営している。
保育士の働きやすさを向上させる施策を導入し、離職率はほぼゼロ。
VOL.203従業員がこどもを預ける「企業内保育所」の運営
仕組みの力で残業ゼロに。
親子も職員も笑顔になる保育所
長女が生まれて、初めて日本って子育てしにくい国だなと思いました。
残業で疲れていると、こどもがちょっと何かこぼすだけで怒ってしまう。心の余裕がないからです。
パパ、ママ、こども、みんなが笑顔でいられるようにと始めた保育の事業ですが、スタッフの笑顔が後回しになってしまいました。初めて受託した保育施設ではスタッフ全員が1年以内に辞めました。こどもの相手ばかりが保育の仕事じゃありません。それを残業したり家に持ち帰っていた。スタッフの心の余裕がなくなっていたんです。
そこからが試行錯誤。まず人を増やして保育の時間中に保育以外の業務をできるようにしました。これで残業はぐんと減り有休も完全消化。それから正社員とパートを同一賃金にして、誰が休んでも代わりが務まるよう日替わりのリーダー制度も。これで離職率はほぼゼロです。
人を増やせば会社の利益は減りますけど、何のための事業なのか、理念の部分に向き合えばできること。スタッフが疲弊していたらいい保育は続けられません。ムダな固定費を思い切り削っているので大丈夫。僕の給料も、まあいずれ上げていければと(笑)。それに、職場にい続けることばかりが仕事じゃない。生産性よくこなして、家庭や地域にも関わることが大事。そこでの経験はいずれ仕事にも帰ってきますから。
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、日高康智
アントレ2017.冬号 「こうすれば続く!7人の稼ぐ道10年継続 私たちの現在地」より