近正宏光さん(46歳)
途中、不動産会社の社長にも就任するが、14年に独立、越後ファーム1本に。
16年にはJALの国際線ファーストクラスの機内食に「雪蔵今摺り米」が採用された。
VOL.198
籾のままでいつまでも新鮮な米。
JALファーストクラスにも採用
壁に当たるたび「さて、どうする」逆境から生まれた超高級米
今年は全国的に日照不足。米の収穫は例年より数週間遅れました。天気ばかりは人間がどう頑張ってもね。
でも出来はまずまず。この米うまいなあって言ってもらうために、農業やってるんです。
「さて、どうする」ばかりの10年です。不動産会社に勤めていた頃、オーナー社長が「これからは食だ、米をつくって売るんだ」と言い出しまして。
米どころの新潟出身というだけで僕に白羽の矢が立ちました。オーナー社長に命じられたら「はい分かりました」と言うしかない。
当時は企業が農業に参入する事例がなくて、役所に行ってもたらい回し。ようやく不動産会社とは別に会社をつくらなきゃだめだということが分かって、次は土地探しです。
新潟を訪ねたら「バカじゃねえの?」という扱いですよ。農業で食っていけないということは皆分かってる。
田んぼを持ってる地元の人だって兼業農家なんだから。でも、細いツテをたどってなんとか田んぼを借りられた。
やっと米ができました。ここからが本当の問題。水の綺麗な山あいの棚田で育てた最高の新潟コシヒカリです。
なのにバイヤーさんには「どこにでもあるよね」と言われちゃう。
差別化、付加価値、うちにしかないものを求められた。さて、どうする、ですよ。
答えはこれ。この今摺り米を見てください。籾のままの米を雪蔵のなかに貯蔵すると、1年たっても新米のおいしさのまま。
私たちは米づくりだけでなく、保管や売り方のところで差をつけたというわけです。
よそではできない高付加価値のお米。値段も高くて1㎏5000円します。
でも米の価格は安くなり、稲作の担い手も減っていくばかり。
戦略っていうほどカッコいいものじゃありませんけどね。
僕らは真面目に米をつくって、米のポジションを上げたいんです。
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、日高康智
アントレ2017.冬号 「こうすれば続く!7人の稼ぐ道10年継続 私たちの現在地」より