起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第24回・何かを応援したい気分の人は集まってください
いきなりですが、クイズです!
ヒントは、なぜデザインの変更が可能になったのか、逆にいえば、これまでできなかった理由が何なのか、そのあたりを考えてみてください。
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
いろいろな分野で技術革新が進んでいます。中でも話題に事欠かないのが「自動車」でしょう。
自動運転の技術が進んでいる話は頻繁にニュースになりますし、「自動運転車が登場した時に自動車はどう変わるのか」といった議論は盛んに行われています。この連載でも何度か取り上げましたし、興味のある方も多いのではないでしょうか。
今回注目したのは、自動車の進行方向面、顔に当たる部分のデザインの話です。網の模様になっていることから「フロントグリル」などと言うようですが、新しく発売される自動車は自動車前面のデザインが非常に凝ったものが多くなっています。
特にトヨタ車は顕著で、レクサスだけでなく、クラウンやアルファードなども、斬新なデザインが話題となっているようです。
それでは解説します!
デザインが変わったのには、明確な理由があります。これまでは、今のようなデザインの車を作りたくてもできませんでした。
まず、デザインがどう変わったのかを考えてみることにします。すると、何かがなくなっているためにデザイン的な制約もなくなっていることに気付けるかもしれません。そう、実は「バンパー」がないのです。正確に言うと、バンパーが退化して小さくなっていて、バンパーよりも前にゴージャスなフロントグリルが設置されているのです。
勘のいい人はこのあたりで気付いたかもしれませんね。バンパーがなくて大丈夫なのか? 答えは「Yes」です。つまり、バンパーがあってもなくても大丈夫な状況になったんです。
なぜなら、自動ブレーキが搭載された車はぶつからなくなるので、衝撃や震動から車体を守るバンパーはいらなくなったということ。とはいえ、一応法律上は必要なので、小さいバンパーが車体の下の方についてはいるのですが。
技術革新は、デザインの世界をも変えてしまいました。
「いらなくなるもの」は、実はいっぱいある!?
人は、当たり前にあるものはずっと当たり前にあるだろうと考えてしまいがちです。特に、自動車のエンジニアなど日々自動車のことを考えているような人でない限り、バンパーがいるかいらないかを考える人はそういないのではないでしょうか。
でも、よく考えてみたら確かにいらなくなるものの1つですよね。そして実際に、これからの自動車からは昔の車のような追突防止のための車体の前に突き出したバンパーはどんどんなくなっていくでしょう。
このように、「○○って実はいらないじゃん」と想像を膨らませることは、頭の体操にもなり、大きな学びにもつながります。
さっそく、未来の自動車においていらなくなりそうなものを考えてみましょう。
たとえば、人が運転しなくなるわけですから、前が見えなくても問題はなくなるかもしれません。となると、ワイパーがなくなる可能性は高そうです。サイドミラーも、バックミラーもいらなくなるかもしれませんし、移動するためのものと割り切ってしまえば、窓そのものもいらなくなるかもしれないですよね。
あとは、暗がりで周りから車体が見えるようにするためのスモールライトは必要ですが、運転手が視界を見やすくするためのヘッドライトはいらなくなるでしょう。
ちょっと考えただけでも、こんなに浮かびました。こうやっていろいろと考えてみるのは面白いので、ぜひやってみてください。
「未来の自動車」の車内が公開された!
先日、アメリカの自動車メーカーのGM社が、将来的に量産する予定の「未来の自動運転車」の車内イメージを公開しました。その写真を見ると、当然運転席がなくなっていて、今で言う助手席と同じような席が2つ並んでいるだけです。
多分そうなるんだろうなと思っていたら、本当にそうなるようで、思わず納得してしまいました。技術革新により、変わるものはいろいろあります。ぜひ頭の体操のつもりで、身の回りのものから想像してみて下さいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「自動ブレーキが搭載されたのでバンパーが退化したから」でした。バンパーがいらなくなったといっても、「ほかの車にぶつけられたらどうするんだ」という議論がネット上などではされているようです。確かにそうですが、もらい事故なら保険で直してもらえるでしょうから、やっぱり特に問題なさそうですね(笑)
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博