「独立・開業」を目標に実際に起業活動を進めている方の年間密着取材、第2シーズン。開業までのプロセスや想いを中心に、苦労話や失敗談まで、リアルな姿を追いかけるドキュメンタリー。
大学卒業後、車・旅行ガイドなどを刊行する出版社に入社。現在57歳で、1年半後に定年を迎えるが、2人のこどもがまだ中学生と高校生なので、現在勤務している会社の嘱託などを視野に入れつつも、起業を優先に検討している。お父さまが経営していた表装業や、趣味だったカヌーやカヤックを取り扱うアウトドアショップ店の開業も選択肢としてあげていたが、自身の経歴と趣味を生かし、カーリペアのフランチャイズ加盟の方向で検討中。現在まだ定職についているため加盟は見送っている。
サラリーマンとして働いていれば、誰しもが迎える「定年」。特に50代の方は定年後のキャリアについて悩む方も多いのではないでしょうか。継続的に働く場合、再就職や独立・嘱託として会社に残るなどの選択肢が考えられます。
出版社に勤務する林原さんは、58歳を迎えるにあたり定年後に嘱託職員として現在の会社に残るか、はたまた独立するかを検討するようになったといいます。
もともと独立志向があったという林原さん。もし独立するとしたら、ご自身の趣味でもあるカーリペア関連のフランチャイズビジネスに取り組みたいと情報収集を開始しました。
過去にカーリペア関係で独立し、成功を収めていたものの最近お店を閉めた従兄に話を聞くと、若者の車離れなどで仕事が激減しており、アフターマーケットでの生き残りはかなりシビアという見解が。そのような現状を目の当たりにし、もう少し視野を広げる必要性を感じました。
2017年1月、世界最大級のカスタムカーの祭典である「オートサロン」に行くと若い人たちがたくさん来ていたため、将来性に関してそこまで悲観的にならなくても良いのかも…という期待を抱いたと言います。そこで、業界の市場性についてより詳細を知りたいとカーリペアのフランチャイズ本部に問い合わせることにしました。
思いがけず従兄から、亡きお父さまの仕事であった表装業を勧められた林原さん。お父さまは書道具を扱う会社に勤めていた経験を活かし、表装(掛け軸)の仕事を始めたようです。表装の仕事は書道家や書道教室の先生のコネクションがあれば、教室の展覧会などのまとまった仕事が入るだろうし、レプリカの仕事にも展開できそうだなと思い定年後の選択肢の1つに入れました。しかし、お母さまにそれとなく話を聞いてみると、畳の部屋が減っている時代背景と、お父さまのように顧客ルートを持っていないということから自分には厳しいのではないかと判断するに至りました。
カーリペア業界も表装業も決め手に欠けるという状況の中、林原さんが着目したのはアウトドアショップの経営でした。20代のころからボランティアでカヤックスクールのコーチをしていたこともあり、リバーカヤックやカヌー関連のアウトドアショップでの独立開業も選択肢の1つに。早速アウトドアショップ経営のアドバイスを行っている老舗カヤックメーカーに問い合わせのメールを送りました。
カヤックメーカーからはなかなか返信が届かず返信の催促をすることもないまま、アウトドアショップ経営は競技人口も扱うショップも減っているので、非現実的だと選択肢から外すことになりました。そして、カーリペアのフランチャイズ本部の担当者と面談をし、「シートの張り替えはB to Cのビジネスだが、カーリペアはB to B。個人を相手にするより需要があるので、がんばれば月商100万円くらいにはなる」と言われ、気持ちはカーリペア業界に傾きます。
また、選択肢が広がることを期待してフランチャイズのオーナー募集イベントに足を運びました。これにより、逆にカーリペア業界への意識が高まり、いよいよカーリペア業界に絞る方向に進み始めました。
次なるステップとして加盟を検討しているフランチャイズのオーナー数名に苦労話や成功体験を聞くことを考えました。しかし、フランチャイズ本部からは「オーナーを紹介していないので自分で探して話を聞いてみてください」と言われます。この後、家庭の電話回線トラブルや仕事が忙しいことが理由で数カ月間、オーナー探しを実行に移せないまま時間だけが過ぎていきます。
林原さんには奥さまと2人の娘さんがいらっしゃいますが、独立を検討していることはまだ話せていないと言います。林原さん自身に迷いや不安がある状態で家族に話してしまうと余計な心配をかけてしまう、というのが理由です。受験を控える娘さんたちのことを思うと、定年後の収入に関しても楽観的ではいられず、ますます切り出しにくいようです。
いつまでも黙っているわけにもいかないため、林原さんは2018年中にはどのように独立するのか詳細を決定し、定年の年になる2019年には家族に話をしたいと考えているそうです。
定年後の選択について相談したり情報交換し合う仲間が周囲にいないのも悩ましいところで、会社内には嘱託社員として残る人もほとんどおらず、将来について危機感をもって考えている人もいないそうです。嘱託についての詳細を伺おうとすると「嘱託の制度がどれくらい活用されているのかも不明です。定年退職の時期も60歳の誕生月なのか、年度末の3月か知りません」という。林原さんいわく、「自分たちの世代は、会社が倒産するような今の時代とは違い、会社員でいれば一生安泰と会社に守られてきた部分があったので、危機感を持てないのは仕方がないとも思います」とのこと。
会社員の傍ら開業準備をする場合は時間の確保が大変ですし、もし家族や周囲の理解や応援がない状況であれば、モチベーションを保つことも難しいでしょう。そのような中で歩みがゆっくりとなってしまうのは仕方ないのかもしれません。
しかし、少しずつでも前に進んできた林原さん。最後に、アントレの密着取材を受けた感想として「多分、1人だと動いていなかったですね。本業が忙しいとごまかして滞留していますが、そろそろ本腰を入れたいと思っています。今後は積極的に加盟検討中のフランチャイズの本部などと話をしていきたいと思います」と語ってくださいました。
林原さんのように働きながら開業準備を進める場合は、想定以上に時間がかかることもあるのであらかじめ余裕をもったスケジューリングをすることが必要です。また、時間がない中でやみくもに進めるのではなく、早め早めの情報収集で自分が置かれている状況を把握したり、物事を決める際の判断材料を揃えるようにするのが良さそうです。
年間密着取材を終えて
定年を間近に迎える中で仕事と開業準備を同時に進めることは、時間的にも体力的にも厳しいもの。さらに、思うように物事が進まなかったり、突発的なトラブルが発生すると精神的にも大変になってきてしまいます。
そうならないようにするためには、余裕をもったスケジューリングがポイント。現実的に実現可能な計画をたてるようにしましょう。そのためには情報収集をきちんと行い、何にどれだけ時間がかかるのかをあらかじめ把握しておくことが大切なのだと感じました。
取材は今回で終わりますが、林原さんが悔いのない決断が出来るよう応援していきたいと思います。
「-SeasonⅡ-長期密着取材! 独立開業への道365日」シリーズ
次回の更新は、2017年12月22日(金)。
Uターンした山梨県でフルーツを使ったゼリーショップをオープンしたい橋爪夫妻。
無店舗で開業の予定から1年。店舗用の土地を購入するまでを振り返ります!
更新日:2017/12/15 文:篠原舞 撮影:吉原朱美
過去の記事を一気読み
- 第1回 サラリーマンなら誰しもが経験する終着点。”定年”を機にした起業!
- 第2回 従兄と同様、アフターマーケットでの開業を検討するが現状を聞くと…
- 第3回 2年後に”定年”を控えて起業を検討!既に開業している従兄に相談
- 第4回 カーリペア、表装業と検討を重ね、次はアウトドアショップ経営へ
- 第5回 「まだ定年まで2年ある」と思って甘えている部分も…。
- 第6回 説明会に出席し、カーリペアのフランチャイズへ再び心が動く。
- 第7回 フランチャイズイベント出席も、カーリペア業界での起業へ!?
- 第8回 紆余曲折もいよいよカーリペア業界へまい進!?
- 第9回 定年を見据えた独立・開業の理想と現実
- 第10回 独立に必要なのは踏み出す勇気と…?
- 第11回 独立は勢いではなく納得のいく判断材料をもって
- 第12回 「忙しい」を言い訳にせず、働きながら開業準備を進めたい
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