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オリジナルの石窯づくりから始まった、ナポリピッツァ職人への道。

オリジナルの石窯づくりから始まった、ナポリピッツァ職人への道。

ナポリから直輸入した石窯をシンボルとするお店には、近隣の家族連れや鮫洲運転免許試験場帰りのお客さまがアツアツのナポリピッツアを頬張る姿が。イタリアンの伝統的なスタイルに縛られることなく、もっと自由で楽しいナポリピッツアを届けたいと語るオーナーの硲さん。資金もノウハウもない中でスタートした独立はハードルだらけだったと笑います。

硲 由考(はざま ゆたか)

大学卒業後、新卒入社で広告代理店へ。4年ほど企画提案営業に従事。さらなる仕事へのモチベーションを得るために独立という道をチョイスする。26歳の頃に移動販売屋台のキッチンカーで事業をスタート。ビジネス街でのランチメニュー提供、各地で開催される音楽フェス、イベントへの出店など精力的な活動を続ける。2016年にピッツェリアと居酒屋を合体させたピザカヤスタイルの店舗「Pizzeria Bakka M'unica」を新規オープンさせた。

大好きなナポリピッツァなら人生をかけられると思った。

――独立のきっかけはなんだったのでしょうか?

硲:前職では医療・介護系の求人事業の立ち上げなど、さまざまなチャレンジをしてきましたが、自分が思い描いていた成果を得るのは難しかった。そこで意識しはじめたのが独立という道だったのです。高校や大学では、自分の思いや気持ちを尊重しながら、物事を考え行動してきました。そんな性格だったので、会社という枠を窮屈に感じたのも独立した理由のひとつだと思います。

――営業職からピザ職人。まるっきり異なるキャリアを選ばれましたね。

硲:独立を考え出したのは新卒入社から3年目のこと。まだ若かったので、スポーツや政治の仕事など、いろいろな道に夢が膨らみました。いくつかある選択肢の中で選んだのが昔から大好きなピザの世界で独立する道でした。大学時代にはピザ屋でバイト経験もありますし、ずっと興味を持って続けられると思ったのです。

――大学時代に出会ったピザが、後の独立を支えるものとなったのですね。

硲:そんなことになるなんて当時の私は想像もしなかったでしょうね。バイト先には当時としては希少な石窯がありました。石窯焼きのピザを初めて食べた時のインパクトはすごかったですね。その後、自分でも焼いてみたいと思いバイト先の先輩に生地の広げ方を教えてもらいました。当然、すぐにできるわけもないので、ハンカチを使って家で練習をしたのは懐かしい思い出です。自分で広げた生地にトッピングをして焼いたピザは、まかないとして食べていました。

「何もない」からこそ自由な発想で夢に挑戦できた。

――大好きなピザでの独立。ハードルは何でしたか?

硲:もうハードルしかないという感じで(笑)。資金も技術もなくて、あるのは元気とやる気だけでした。とはいっても立ち止まってはコトが進みません。まず目標としたのは、ピザ職人としてのスキルを得て、自信を持って提供できるピザの味を確立することでした。
そのためにも、とりあえず石窯に触れることが重要だと思い、都内のピザレストランなどにアプローチ。アルバイト代はいらないから経験を積ませてくれと相談しました。

――行動力と発想がすごいですね。そこからピザ屋さんでの修行がはじまるわけですね。

硲:いえいえ。10軒ほどに相談しましたが結果は全てNG。出だしから打つ手ナシという過酷な状況でしたが、「店で修業が無理なら自分専用の石窯を作っちゃえ」と意外と切り替えは早かったですね。「実家の空いている土地を使っていいよ」といってくれた友人の好意に甘えて、オリジナルの石窯を作ることになりました。バイクに薪を積んで、自宅から一時間半の道のりを毎日往復。生地を寝かせる時間は? 塩加減は? など、本当に何枚焼いたかわからないほど試作を繰り返しました。その味見をしてくれたのは、友人のご両親でした。今、思えばとんでもない味の試作品もあったと思います。それにも拘わらず、嫌な顔ひとつ見せないで食べてくれたお二人には今でも頭が上がりません。

――納得のいくピザができるまで、どれくらいの期間がかかりましたか?

硲: 毎日、焼いて、食べて。やっと理想に近いものができたのは3か月目でした。ほぼ独学だったので、味を決める上でのヒントが欲しかったり、行き詰まった時はピザ屋巡りをして食べ比べたりしていました。実はナポリピッツァのソースは塩とトマトだけでつくるシンプルなもの。それゆえ、塩とトマトのバランスが重要ですし、それが結局お店の味になる。だから、日本で買えるトマトソースは全て試しました。

――デリバリーカーでの開業、どのような狙いがあったのでしょうか?

硲:ナポリピッツァのファンの方がお店に来るのは当たり前。でも、それでは面白くないと思ったんです。石窯を積んだ車で街へと飛び出して、行く先々でナポリピッツァとまだその魅力を知らない人との出会いをつくろうと思ったのです。ランチタイムのオフィス街やイベント会場など、あらゆる場所でピザを焼いてきましたが「この車スゴい! 石窯がついてる!」なんて声をかけてもらった時はこちらも楽しい気持ちになりますよね。

――キッチンカーから店舗型へと順調に経営は拡大されていますね。

硲:もともとはデリバリーカーでの販売を合理的にするために借りた倉庫でしたが、一年ほど前からお店として稼働させています。以前よりもピザのクオリティにこだわれるようになったことも店舗型にしてよかったことのひとつです。たまたまピザがイタリア料理の一種なだけであって、決してガチガチのイタリアンレストランをやりたいわけではありません。ですから地域の方同士で交流できるように囲炉裏スペースなどを設置し、ピザも楽しめる居酒屋のような雰囲気づくりを行っています。近所のおばあちゃんが「この店はこれがおいしいよ」と、たまたま隣に居合わせた若いお客さまに声をおかけになっている様子も珍しい風景ではありません。デリバリーカーでは商品を渡せば終わりですが、ここではどれだけ心地よい時間を送ってもらえるかが大事になります。おいしいピザと素敵な時間をお届けできるように、これからもがんばっていきます。

取材・文/池ノ内契忠 撮影/難波宏

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