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”横綱相撲”は絶対取るな! 心理学者・内藤誼人が教える「勝てる交渉術」【第3弾】

”横綱相撲”は絶対取るな! 心理学者・内藤誼人が教える「勝てる交渉術」【第3弾】

人生において、どんな場面でも“交渉”はつきものです。

営業時の商談や金額の交渉といったビジネスでのシーン。あるいは人とのコミュニケーションにおいても交渉の場面は多々発生します。

その駆け引きで勝てば自分の都合の良い方向に持っていけますが、負ければ損失を被ることもあります。

私たちがより良く生活していくうえで、交渉術は欠かせない能力の1つです。

そこで今回は、心理学者の内藤誼人先生に、交渉を有利に進める方法と、相手から仕掛けられた時の対策を解説していただきます。

あらゆる交渉の場面で使えるので、ぜひ実践してみてください。

日本人が交渉ベタなのは「横綱相撲」好きだから? 先手必勝で交渉を勝ち取れ!

それでは早速、交渉を有利に進めるためのポイントを解説していきましょう。

まず、交渉という“勝負ごと”で勝つためには、必ず先手を取ること、すなわち「こちらから先に条件を出す」ということが圧倒的に大切です。

間違っても、後手に回って相手の条件を先に受け入れてはいけません。

交渉において最初に提示する条件を「アンカー(錨=いかり)」と呼び、これが交渉結果に影響を与えることを心理学では「アンカリング」と言います。

「アンカー」、つまり条件を先に投げ込むことによって、相手はその条件の範囲からあまり動けなくなります。

最初に自分から「アンカー」を投げ込み、先手を打つことで交渉を有利に進めることができるのです。

日本人は世界各国の人と比べて、とても「交渉下手」と言われています。その理由は、日本人は相手の出方を見てから、自分がどのように動くかを決めようとする傾向にあるからです。

皆さんも、自分の思ったことを言えずに対応が常に後手に回ってしまう、そんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。

日本の国技である相撲に置き換えると、自分から攻めずに相手の攻撃を受け止め、そこからゆっくりと土俵際に追い込んでいく。この「横綱相撲」が日本人は大好きなのです。

技を受けてから返す。そういったやり方は日本人好みのやり方ではありますが、それは交渉には向いていません。

必ず先に攻撃を仕掛けて、常に自分の有利な形で進めていくことが、交渉の場において非常に重要なことのです。

交渉で先に条件提示をすれば、自分の都合の良い方向へ引っ張れる

ここからは、前項で解説した交渉における「先手必勝の法則」を、海外のデータを用いてさらに深く掘り下げていきます。

アメリカのノースウェスタン大学のアダム・ガリンスキー氏が行った実験を紹介しましょう。

ガリンスキー氏は、コンサルティング会社で新卒採用者のボーナス交渉を成立させる、という模擬交渉を実施しました。

要するに、会社のボーナスの金額、あるいは有給の日数を交渉し合う、という実験です。

そのコンサルティング会社に勤めたいという新卒採用者と、人事担当者のグループに分け、先に条件を出す側と出される側、それぞれ立場を変えて交渉を行いました。もちろん、どちらの立場でもお互い利益が最大化するように話し合ってもらっています。

それぞれの立場から考えれば、新卒採用者はたくさんボーナスが欲しい。一方、人事担当者はできるだけ会社に負担をかけないためにお金を出したくはありません。

ではそれを踏まえて、それぞれの条件の実験結果(ボーナス金額)を見てみましょう。

新規採用者が先に条件を出した場合:17,843ドル
人事担当者が先に条件を出した場合:12,887ドル

ご覧の通り、新卒採用者が先に条件を出した場合はボーナスの金額が高く、逆に人事担当者が先に条件を出した場合はボーナスの金額は低くなりました。

この実験データから分かるように、交渉とは「先に条件を出した方が、自分の都合の良い方向に引っ張ることができる」のです。

交渉する時に優先したい事柄(例えば、金額や納期、仕事の質など)を明確にし、先に「アンカー」を投げ込むことができれば、自分の思い通りの結果で交渉を妥結する可能性がグッと高まるでしょう。

もし先に「アンカー」を打たれたら、どうする? 「仮定法」を駆使して、相手の交渉を迎撃せよ!

あらゆる交渉の場において、先に条件を出した方がその後の主導権を握ることができることは、ここまでデータとともにお教えしました。

しかし時には、相手に先手を打たれてしまうこともあると思います。

そこで最後に、先に条件を提示された時に役立つ対策をお教えしましょう。

その方法とは、仮定法を上手に使うことです。

例えば、土地を買おうとした際、「この土地は1億円です」と先に金額を出されたとします。

その時に「仮にこの土地を二等分したらどうなりますか?」「仮に四等分したらいくらになりますか?」と、相手の条件を崩していきながら話を進めていきます。

そうすることで相手から情報を引き出し、投げ込んできた「アンカー」に根拠があるのか、その値段に見合っているのかどうか、さりげなく探ることができるのです。

違う例でも見てみましょう。

相手が付属品付きのある商品を「100万円で買ってください」と条件提示してきたとします。

その時は「仮に付属品を外した場合、値段はいくらになりますか?」「仮にもう少し値段が高くてもいいので、その分付属品を増やしてもらえますか?」と、逆にこちらから条件を提示します。

もし先に相手から投げ込まれた「アンカー」に根拠がなく、値段に見合っていなければ、「1回持ち帰らせてください」と交渉を切り上げましょう。

そして「その値段では無理です」と断りましょう。無理に話を続ける必要はありません。

なぜなら交渉というのは、「飲みたくない条件は飲まない」という姿勢が非常に重要だからです。

「自分は納得できなければ交渉を打ち切りますよ」というカードは最後まで相手にちらつかせておく必要があります。

もしも相手に「交渉を打ち切れない」と悟られたが最後、もうどんな条件でも飲まないといけない方向に引っ張られてしまいます。

そうなったらもはや交渉になりません。

いつでも交渉から抜け出せることを相手に示す。これは常に念頭に置いておきましょう。

どんなビジネスシーンでも、あるいは日常生活においても交渉はつきもの。解説した「先手必勝」そして「仮定法」を用いて、あなたの人生を少しでも有利な方向に導いてください。

【独立に役立つ心理学シリーズ:バックナンバーはコチラから!】
自分をより知的に見せる!心理学者・内藤誼人が教える2つのポイント【第2弾】
https://entrenet.jp/magazine/10648/

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プロフィール:内藤誼人(ないとう よしひと)
心理学者。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。

大学院在学中より専門の心理学を活かした執筆活動を開始し、卒業後に有限会社アンギルドを設立。

ビジネス心理学を実践的に応用するアドバイスには定評がある。
新刊に、「ジョジョの奇妙な冒険が教えてくれる最強の心理戦略」(かんき出版)
「ヤバすぎる心理学」(廣済堂)など。
講演会・セミナーの依頼は、システムブレーンまで。

システムブレーン(講演・セミナー情報問い合わせ先)
http://www.sbrain.co.jp/

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