岡安大輔さん(35歳)
吉井広宣さん(38歳)
吉井竜一さん(41歳)
父は厩務員(厩舎で働く従業員)、竜一さんは現役騎手、広宣さんは元厩務員という競馬一家。
大輔さんが創業した(株)TMOを広宣さんも手伝う。
事業内容はSIMフリー携帯電話、飲食事業、競馬事業など。
VOL.184競馬一家に育った3兄弟。ダービー優勝の夢を追う
バラバラになった家族の絆。
会社と馬で取り戻す
僕が高校の頃、上の兄が騎手としてデビューしました。強かった。
重賞レースに勝ち続けて、地方競馬の夢舞台、東京ダービーも確実視されてたんですよ。でも直前で馬が故障して欠場。それが悔しくて。僕は憧れの騎手にはなれず、見習で入った厩務員も合わず、すぐに脱走。でもずっと思ってました。
今度は馬主になって競馬の世界に戻ってくるんだ、自分の馬で東京ダービーに挑戦するんだって。
20歳の時、厩務員だった父親が失踪しました。もともと自由人、ふっといなくなるのは日常茶飯事でしたが、この時は本気の失踪。後に残ったのは金利を含めて6000万円の借金。兄が建ててくれた家は借金のかたに取られ、吉井家の暗黒時代です。皆バラバラ。花形騎手の兄の迷惑になってはいけないと、借金は僕が背負い込むしかなかった。全額返済まで7年かかりました。
どうやって返したか?
1日20時間働きました。
その頃「日銭の仕事には限界がある」と気づいたことが起業のきっかけです。
2番目の兄と久しぶりに温泉に行った時のこと。「やっぱり競馬はいいね」という話になって、馬主になるという20年越しの夢に向かってスイッチが入りました。それから2年、本業で稼いだお金で、先月ついに馬を買ったんです。
当然、上の兄に乗ってもらいたい。2番目の兄も誰より競馬に詳しいですから、会社の一員として競馬関連の事業を任せています。会社を作る時から「いつか家族で」という青写真がありました。競馬は僕が育った場所であり、家族が人生を共にする場所。それを取り戻すために、です。
照準はもちろん、東京ダービー。たとえ兄が取れなくても、騎手の養成学校に通っている兄の息子に目指してもらうつもり(笑)。
しつこいんですよ、僕の夢は。
アントレ2017.夏号 「1人では決断できなかった 私と家族の独立物語」より