不動産の名義変更とは?自力でする場合の方法をパターン別に紹介

土地や建物など、不動産を新たに所有することになったり手放したりする場合、「名義変更」を行う必要があります。とはいえ、具体的に何をどうすればいいかわからない…と思いがちです。
不動産の名義変更に関する基礎知識と共に、自分で名義変更する場合の流れや注意点についても解説していきます。
「なぜ名義変更が必要なのか?」「自分で手続きできるのか?」と疑問に思ったときには、ぜひ参考にしてみてください。
不動産の名義変更は自身の不利益を予防するために必要
不動産の情報は、法務局に保管された「登記簿」という書類に掲載されています。不動産の名義とは、ここに記されている「所有者」のことです。
何らかの理由で所有者が変われば、不動産の名義を変更する必要があります。不動産の名義変更は、「所有権移転登記」とも呼ばれています。
不動産の名義変更は、実は義務ではありません。名義変更をしないままでも、それによって何らかの罰が下されることはないのです。
しかし、不動産の名義変更をしないまま放っておくことは、持ち主の不利益につながるリスクがあります。
所有権を持たない不動産を勝手に売却することはできませんし、法的に、その権利を主張することもできなくなってしまいます。
名義変更の基礎知識【状況・場所・費用・時間】
不動産の名義変更に関する基礎知識は、以下を参考にしてみてください。
名義変更が必要になる状況 | 相続・贈与・離婚・財産分与・不動産売買 |
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名義変更を行う場所 | 法務局(対象不動産を管轄しているところ) |
名義変更に必要な費用 | 3万円~7万円 ※固定資産評価額によって費用が変わる |
名義変更にかかる時間 | 書類準備期間+通常1~2週間程度(審査期間) |
どのような場合においても、不動産の名義が勝手に切り替わることはありません。所有者が変わることになったら、手続きを忘れないようにしましょう。
手続きの期限に特に定めはありませんが、相続や贈与、財産分与に関する協議がまとまった後、できるだけ早く手続きを行うのがおすすめです。
不動産の名義変更は自力でも可能!4つの状況の対処法
不動産の名義変更は、自力で行うことも可能です。とはいえ、手続き方法や必要書類は、状況によって異なるもの。
自分自身の状況をしっかりと把握した上で、根気強く取り組む必要があるでしょう。
不動産の名義変更が必要となる4つの状況別に、自力で名義変更を行うための必要書類・流れを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
不動産を「相続」した場合
土地や建物など、不動産を遺産として相続した場合に必要な書類は、以下のとおりです。
- 登記原因証明情報
- 登記識別情報
- 住民票
- 印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで記載されているもの)
- 戸籍証明書(法定相続人全員分)
相続による名義変更で、もっともわかりにくいのは「登記原因証明情報」でしょう。登記原因証明情報とは、相続関係説明図と遺産分割協議書を指します。
つまり、「亡くなった方とどういった関係にある人が、どのように遺産を相続するのか」を明らかにする必要があります。
法定相続分に関する手続きでは、被相続人と法定相続人との関係を図に示した書類を準備しましょう。一方で、法定相続分以外の場合は、遺産分割協議書も必要です。
名義変更の手続きの流れは、以下のとおりです。
- 物件の詳細をリサーチする
- 亡くなった方の戸籍から、相続人をリサーチする
- 必要な書類を関係各所から収集する
- 登記に必要な書類を作成する(遺産分割協議書など)
- 遺産分割協議書に、相続人全員分の署名押印をもらう
- 法務局に申請・審査
相続による不動産の名義変更は、その他のパターンと比較してやや複雑です。古い戸籍の解読や相続人リサーチなど、難しい場合はプロに依頼しましょう。
不動産を「生前贈与」する(される)場合
生前贈与の場合の手続きは、贈与する側とされる側の両方が共同で行います。必要書類は以下のとおりです。
- 不動産贈与契約書
- 登記識別情報
- 贈与した人の印鑑証明書
- 贈与を受けた人の住民票
- 固定資産評価証明書
不動産贈与契約書は、名義変更のために必須ではありません。とはいえ、後々のトラブルを避けるためには、作成しておいた方が安心です。
名義変更の具体的な流れは、以下を参考にしてみてください。
- 物件の詳細をリサーチする
- 贈与を受けた場合の税金について把握する
- 必要な書類を関係各所から収集する
- 登記に必要な書類を作成する(贈与契約書など)
- 贈与契約書に署名押印する
- 必要書類をまとめて、法務局に申請・審査
不動産の贈与に伴う登録免許税は、「固定資産評価額×2%」で計算できます。これ以外にも、贈与税や不動産取得税が加算されますから、こちらも計算しておきましょう。
離婚によって不動産を「財産分与」する場合
離婚によって不動産を財産分与することになったら、双方が共同で不動産の名義変更を行います。以下の書類を準備しましょう。
- 財産分与契約書
- 登記識別情報
- 元々の所有者の印鑑証明書
- 新しく所有者になる人の住民票
- 固定資産評価証明書
- 戸籍謄本
財産分与契約書とは、財産分与に関する話し合いをした結果をまとめた書類のこと。これによって、双方が財産分与に納得していることを証明できます。戸籍謄本は、法的に離婚が成立していることを示すために準備しましょう。
手続きの流れは、贈与の場合とほぼ同じです。贈与契約書の代わりに財産分与契約書を準備し、当事者2人が署名・押印してください。
離婚の場合の登録免許税は「固定資産評価額×2%」。贈与税や不動産取得税は、財産分与の状況や目的に応じて、課税されるかどうかが変わってきます。
不動産を「売買」する場合
不動産売買によって名義変更を行う場合、不動産会社の仲介によって、司法書士に依頼するケースが一般的です。「どうしても自分で」という場合には、以下の書類を準備しましょう。
- 売主・買主それぞれの印鑑証明書
- 登記識別情報
- 固定資産税評価証明書
- 売主・買主それぞれの住民票(売主は登記上の住所ととなる住所が記載されている場合のみ)
売買する場合も、基本的には「必要書類を準備して法務局に提出する」という流れになります。売買の場合、決済と同日に行うケースが一般的です。
登録免許税は「固定資産評価額×2%」ですが、登記内容によって軽減税率が適用される可能性も。手続き時期によっても異なりますから、事前にリサーチしておきましょう。
また、不動産を売却して利益が出た場合には、所得税や住民税が課税される可能性もあります。
不動産の名義変更を自力で行う場合の注意点3つ
不動産の名義変更は、自力で行うことも可能です。とはいえ、実践する際には注意も必要。特に以下の3つのポイントは、頭に入れておいてください。
プロのアドバイスはできる限り活用しよう
自力で名義変更を行う場合でも、プロのアドバイスはできる限り活用しましょう。具体的には、以下のような場所を利用できる可能性があります。
- 司法書士による無料相談
- 法務局の窓口
自身の状況や情報をまとめておけば、具体的な事例に基づいたアドバイスを求められます。「このような場合はどうしたら?」など、具体的に相談しましょう。
平日に動ける時間を確保しよう
手続きのためには、各種窓口を訪れる必要がありますが、基本的に開いているのは平日の昼間です。よって、この時間に動ける時間を確保することも重要なポイント。
「費用節約のために自分で手続きすることを決めたが、その分仕事を休まなくてはならず、給料が減ってしまった!」というケースもあります。
不動産の名義変更は、1日で完了できる手続きではありません。時間を確保できるかどうか、また自分で主体的に動けるかどうかも、しっかりと検討しておきましょう。
特殊な事情がある場合はプロに依頼するのが賢明
不動産の名義変更は、基本的に「時間と努力を惜しまなければ自力で可能」です。しかし中には、状況が複雑で、素人では歯が立たないようなケースもあります。
このような場合に無理をし続けても、時間ばかりを無駄にしてしまいます。無理だと思ったら、その時点で迷わずプロに相談しましょう。
司法書士は不動産名義変更のプロ
不動産の名義変更の依頼先は、司法書士がおすすめです。司法書士は、相続や不動産登記に関する手続きのプロ。安心してお任せできます。
司法書士に依頼する3つのメリット
司法書士に手続きを依頼した場合のメリットは、以下の通りです。
- 第三者の目を入れられる
- 税金関連のアドバイスを受けられる
- 手間がかからない
特に相続や生前贈与の場合、不動産の名義変更が親族間トラブルに発展する可能性も。司法書士が間に入っていれば、第三者の目が入ります。何らかのトラブルが発生した場合でも、手続きの詳細や正当性について、客観的に証明できるでしょう。
手続きのプロに相談すれば、手続きする前に、将来的に発生する税金についてもアドバイスしてもらえます。
司法書士に依頼するデメリットは「費用」
一方で、司法書士に依頼するデメリットは、司法書士に支払う報酬でしょう。各種税金や手数料に加えて、司法書士に支払うお金が必要となります。
具体的な金額は、司法書士事務所によって異なるもの。書類作成から全てをお任せした場合、大体10万円前後が相場です。
不動産の名義変更、自力で行うなら準備は慎重に!
不動産の名義変更は、がんばれば自力でも可能です。必要書類を把握した上で、準備・作成・提出しましょう。
とはいえ、手続きをするためには、最低限の法律知識が求められるもの。書類収集や書類作成能力も必要となります。
名義変更に期限はないため、自力でゆっくりと準備することも可能です。とはいえ、自身の不利益を避けるためには、できるだけ素早く手続きを完了させるのがおすすめ。
「歯が立たない」と感じた場合は、手続きのプロである司法書士にも相談の上で、円滑に作業を進めていきましょう。





