離婚で揉めないための事前準備とは?家などの財産分与の注意点!

離婚を検討するのであれば、事前準備がとても重要です。できるだけ穏やかに、スムーズに話を進めていくため、できることはやっておきましょう。
とはいえ、「具体的に何をどうすれば良いのか?」と悩む方も多いはず。離婚後に揉めないための、離婚準備のコツを紹介します。
離婚に事前準備が重要な理由
「離婚したい」という気持ちは、いつどこで生まれるかわからないもの。じわじわと気持ちが募る人もいれば、ある日突然爆発する人もいるでしょう。
どちらにしても、無計画に離婚に向けて突き進むのはおすすめできません。しっかりと事前準備を整えた上で、離婚への道を計画的に歩んでください。
衝動的に離婚を告げるのがNGな理由としては、以下の3つが挙げられます。
離婚後の生活を安定させるため
婚姻中は、夫婦が協力して一つの家庭を成り立たせています。離婚すれば、これまでとは全く異なる生活を送ることになるでしょう。
専業主婦など、お金を稼ぐ手立てを持たない人が事前準備なしで離婚した場合、その後の生活が立ち行かなくなってしまう可能性が高いです。
また稼ぐ力はあっても、油断は禁物。家の中の物事を全て配偶者に任せていた場合、金銭面以外の場所で、問題が発生してしまうでしょう。
離婚をスムーズに成立させるため
離婚とは、結婚以上にエネルギーを使うもの。できるだけスムーズに話をまとめるためにも、事前準備は必須と言えます。
夫婦どちらかが離婚を望んでいたとしても、他方も同じとは限りません。また離婚そのものに意義はなくても、詳細条件で揉めるケースは少なくないのです。
離婚の決意についてあらためて考えるきっかけにも
衝動的に離婚を決意したとしても、それが最善とは限らないのが現実です。本当に離婚の決意が変わらないか見極めるためには、時間を置くのがベストでしょう。
離婚前に必要な事前準備7つ
離婚前にしておくべき準備は、以下の7つです。どれも重要なものばかりですから、一つずつ確実にこなしていきましょう。
離婚をする「理由」を明らかにする
まずは、離婚を選択する「理由」について明らかにしましょう。
特別な理由がなくても、夫婦両方が合意していれば離婚は可能。しかし、相手側が同意していない場合には、この「理由」が重要な意味を持ちます。
相手方が離婚に同意してくれない場合、裁判で争うことになりますが、離婚を認められるのは以下の理由がある場合のみです。
- 相手方の不貞行為(浮気や不倫など)
- 悪意の遺棄(生活費をは払ってくれない、勝手に別居するなど)
- 3年以上の行方不明(連絡もとれず生死不明)
- 重度の精神疾患で回復の見込みがない
- その他重大な理由(暴力やモラハラ、借金など)
離婚する際の条件を明らかにする
離婚で後悔しないためには、離婚後の生活を見据えた上で、必要な条件をまとめておくことも重要なポイントです。
- 離婚後にどのような生活をしたいか?
- そのためには、相手方にどのような条件を飲んでもらうべきか?
- 財産はどのように分けるのか?
- ローンの扱いはどうするのか?
今後住む家はどうするのか?今まで住んでいた家をどうするのか?もしっかりと話し合う必要があります。
後述しますが、家などの「不動産」はきっち分けられないものなので、トラブルに発展してしまう可能性があります!
不動産売却の査定を受けて、相場観を掴むことが重要です。住宅ローンが残っている場合はさらにややこしくなり、連帯保証人についてもしっかりと確認しておく必要があります。
理由を客観的に示す「証拠」を収拾する
離婚理由がはっきりしたら、できるだけ多くの客観的証拠を集めておきましょう。
- 浮気の証拠(写真や録音、メッセージのやり取り履歴など)
- DVの証拠(暴力を受けたときの写真や診断書)
- モラルハラスメントの証拠(日々の記録や録音)
こうした証拠は、離婚そのものを認めてもらうためだけでなく、自分にとって有利な条件で離婚するためにも使えるでしょう。
またこれ以外にも、財産関係の証拠も収拾しておきましょう。
- 預金通帳のコピー
- 給与明細など所得を示す書類
- 生命保険関連書類
- 不動産関連書類
このように、動かぬ証拠があれば財産分与や慰謝料、養育費の話し合いで揉めるリスクも小さくなります。
請求できる費用を明らかにする
離婚する際には、自分に権利があるお金や資産についても明らかにしておきましょう。個々の状況によって異なるため、自分の場合はどうなるのか、リストアップしてみてください。
- 慰謝料
- 養育費
- 婚姻費用
- 財産分与
自分にどのような権利があるのかわからない場合は、弁護士などの専門家に相談するのもおすすめです。状況を聴き取りした上で、適切に判断してもらえるでしょう。
共有財産をリストアップする
離婚する際、夫婦の共有財産は二人で分けることになります。どのような財産が対象になるのか、事前にリストアップしておきましょう。
ある程度のお金を準備する
離婚に向けて具体的な行動をスタートするために、ある程度のお金を準備することも大切です。
金額の目安は、大体100万円程度。このくらい用意できれば、離婚や別居が決まった際に、すぐに新たな住まいを見つけられるでしょう。
気持ちの準備を整える
離婚するためには、いくつもの精神的ハードルを乗り越えなければいけません。気持ちの準備も、しっかりと整えておきましょう。
話し合いがうまく進まなければ、当然裁判や調停になる可能性も。裁判になれば、結論が出るまでに1~3年と、問題が長期化する恐れもあります。
離婚で最も揉めやすいのは「きっちり分けられないもの」
離婚時の話し合いで多いのが、どちらが何を手に入れるのかで揉めてしまうケースです。
まだ「現金」のように、数字ではっきり見えるものは良いのですが、その性質上、きっちり分けるのが難しいものに関しては、トラブルが発生しがちです。
きっちり分けられないものの例としては、
- 親権
- 不動産
- 家(※住宅ローン含む)
などが挙げられるでしょう。
親権については難しいですが、不動産や家、住宅ローンについては、事前の準備で揉め事を回避できる可能性が高いです。
そのための方法と知っておきたいポイントは、次から解説していきます。
財産分与の3つの種類と住宅ローンの関係性
離婚時の財産分与には、以下の3つの種類があります。
清算的財産分与 | 婚姻中に夫婦2人で築いた財産を、1/2ずつ分ける方法。 もっともスタンダードな形。 不動産など、はっきり分けられないものは話し合いにて対応。 |
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扶養的財産分与 | 生活能力がない人が離婚する場合に、 生活能力がある側が、一定期間サポートするタイプ。 両方に収入がある場合や、頼れる親族がいる場合は対象外。 |
慰謝料的財産分与 | 慰謝料として、金銭以外の財産を受け取る方法。 「慰謝料代わりに家や土地をもらう」といったケースがこれに当たる。 |
財産分与について検討する場合には、以上3つのうち、どれに当てはまるのかチェックしてみてください。その上で、話し合いを進めていきます。
財産分与の対象に家が含まれている場合、住宅ローンについてもあらかじめ考慮しておく必要があります。
住宅ローンの状況別に、財産分与の具体的な方法やポイントを解説します。
住宅ローンを完済した家の財産分与は?
住宅ローンを完済している場合の財産分与は、比較的シンプルです。家や土地の価値を明らかにした上で、以下のいずれかの方法で財産分与しましょう。
- 不動産を売却し、そのお金を等分に分ける
- 不動産の価値をもとに、不動産を受け取らない側に相応の財産を与える
不動産査定でマイホームの価値が3,000万円となった場合、そのまま売却して1,500万円ずつ分けるのが1の方法です。
2の方法では、どちらか一方が3,000万円の不動産を受け取る代わりに、もう一方が3,000万円分の別の財産を受け取ることになります。
現金や預貯金、有価証券や車などで3,000万円分の財産を用意できれば良いのですが、そうとは限らないでしょう。
住宅ローンが残っている家の財産分与は?
住宅ローンが残っている場合の財産分与は、さらに複雑になります。こちらの場合も、まずは家の価値を明らかにしましょう。
家の価値がわかったら、住宅ローン残債と比較します。住宅ローン残債が、売却金額を上回るケースをオーバーローン、残債が売却金額を下回るケースをアンダーローンと言います。
オーバーローンの場合とアンダーローンの場合、また誰がその家で暮らすのかによって、方法も変わってくるでしょう。
- 【オーバーローン】ローン契約者がそのまま暮らす場合
- オーバーローンの場合、物件を売却しても住宅ローンを清算できません。ローン契約者がそのまま不動産に住み続ける場合、特別な手続きなく、そのままローンを返済していけばOKです。
- 【オーバーローン】ローン契約者以外が暮らす場合
- オーバーローンであり、なおかつローン契約者以外が該当物件に住み続ける場合、不動産名義とローン支払いがポイントに。住宅ローンの借り換えによって、住み続ける人が名義人となり、ローンを支払っていく方法があります。住み続ける人に収入がなく、借り換えが難しい場合、扶養的財産分与や養育費として他方がローンを支払い続けるケースもあります。
- 【オーバーローン】ペアローンの場合は?
- 夫婦2人でローンを組んでいる場合、不動産を受け取る側が、ローンについても引き受けます。2人分のローンを一本化し、借り換えできるかどうかがポイントとなるでしょう。ローン一本化が難しい場合、任意売却をした上で残債を等分するといった工夫が必要です。
- アンダーローンの場合は?
- 家の価値がローン残債を上回る場合は、完済している場合とほぼ同じです。不動産売却した上でローンを完済し、それでも余ったお金は等分に分けます。物件を手放さず、どちらか一方が住み続ける場合、「売却した場合に得られる利益の1/2」を、相手方に支払う必要があります。
不動産の財産分与で必要な事前準備5つ
家や土地といった不動産の財産分与で揉めないためにも、事前準備はしっかりと行っておきましょう。必要な準備は以下の5つです。
1.不動産の名義を明らかにする
今現在、不動産の名義が誰になっているのかによって、離婚に向けた行動にも違いが出てきます。まずは、不動産の名義を明らかにしましょう。
不動産の名義は、登記簿謄本で確認可能。法務局へ行き、登記事項証明書を発行してもらいましょう。事前にインターネット請求しておくと便利です。
2.住宅ローンの契約状況を確認する
住宅ローンを契約している場合、その状況についても明らかにしておきます。特に重要な情報は、以下の2点です。
- 住宅ローン残債
- 連帯保証人
住宅ローンがどの程度残っているかは、財産分与を考える上で非常に重要なポイントです。できるだけ早く明らかにしておくことで、その後の手続きもスムーズに進めていけるでしょう。
また、連帯保証人の確認も忘れないでください。たとえ自分が家を出ることになっても、連帯保証人としての義務が、自然に解消されるわけではありません。
3.不動産の取得時期を確認する
不動産の財産分与を考える上で、取得時期も重要なポイントとなります。
なぜなら、婚姻前や別居後に取得した不動産は、共有財産とみなされないからです。共有財産とみなされなければ、当然財産分与の対象にはなりません。
4.特有財産について確認する
特有財産とは、共有財産以外の、個々で保有する財産のことを言います。不動産関連にも、特有財産が関わっているケースが多いため、あらかじめ確認しておきましょう。
具体的には、
- 不動産取得時に頭金として使った、独身時代からの貯金
- 不動産取得時に、親から出してもらった援助金
などが特有財産にあたります。
5.不動産の査定を受ける
財産分与対象となる不動産は、不動産査定によってその価値を明らかにしておきましょう。
もちろん、査定によって得られる情報はあくまで目安。ただ、相場感覚をつかむことで、財産分与の目安や住宅ローンとの兼ね合いを判断しやすくなります。
離婚後の不動産トラブルを回避するためのポイント4つ
離婚後の不動産トラブルは、できれば避けたいところです。余計なトラブルに巻き込まれないためのポイントを4つ紹介します。
ローン契約者以外が暮らすなら返済放棄対策を
離婚後の不動産トラブルとして多く見られるのが、返済放棄です。
ローン契約者が引き続き支払いを行い、契約者以外がその家に住み続ける場合、ローン契約者が故意に支払いをストップする可能性があります。
こうした問題を回避するためには、離婚時にしっかりと対策しておきましょう。具体的な方法は以下の通りです。
- ローンの名義人を住み続ける人に変更する
- ローンの支払いを続けるよう、公正証書を作成する
ローン返済能力がある場合は、1の方法を選択するのがもっともシンプルです。自分で住む家のローンは自分で支払えるよう、あらかじめ手続きしておきましょう。
ローンの名義変更が難しい場合、相手方がローン支払いを怠らないよう、支払いについて公正証書を作成しておくのがおすすめです。
- 公正証書とは?
- 契約内容や取り決め、約束事などについて、公証人が書証として作成し、 内容を証明するための書類。高い証明力がある。
離婚時の取り決めについては、離婚協議書を用いるケースが多く見られます。公正証書は離婚協議書よりも強い効力を持ち、内容に違反した場合、強制執行が可能です。
出ていく場合には「連帯保証人」の確認・変更を
自身が家から出ていく場合には、連帯保証人の確認・変更を忘れないようにしましょう。先ほどもお伝えしたとおり、後々、非常に大きなトラブルになる可能性があります。
連帯保証人を変更するためには、住宅ローンを組んでいる金融機関に相談する必要があります。この場合のポイントは以下の3点です。
- 現在の連帯保証人と同等、もしくはそれ以上の信用がある人物を用意する
- 連帯保証人を用意できない場合、土地や建物などの物的担保を提案する
- 認められるかどうかは、金融機関次第
共有名義は解消しておこう
夫婦の共有名義で不動産を所有している場合、名義をそのままにしておくのはやめましょう。共有財産を通じて余計な関係を維持することになりますし、トラブルの原因にもなります。
- どちらか一方の返済が滞って揉める
- 固定資産税の支払いで揉める
将来的には、家のメンテナンスや相続で揉めることにもなりかねません。トラブルの原因は、できるだけ早期に解消しておきましょう。
不動産関連書類はできるだけ早めに確保しよう
不動産が財産分与の対象になっている場合、以下のような関連書類はできるだけ早めに準備しておきましょう。
- 不動産の登記済証もしくは登記識別情報
- 印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 住民票 など
特に、現在相手の名義になっている不動産を、自分名義へと変更しなければならない場合、注意が必要です。手続きそのものは離婚後でなければできませんが、離婚後、相手が協力してくれるとは限らないからです。
手続きが進まなければ、不動産の名義変更はできません。最悪の場合、相手方が勝手に売り払ってしまう恐れもあります。
離婚を検討し始めたら、不動産に関する書類は、できるだけ早く準備してまとめておきましょう。財産を守るためにも重要なポイントとなります。
不安な点は離婚時に条件として明らかにしておこう
「書類は無事に集められたけれど、本当に相手が協力してくれるかどうか心配」という場合は、名義変更への協力を、離婚時の条件として提示するのがおすすめです。
最初からルールを明らかにしておくことで、後々のトラブルも少なくできるでしょう。
不動産の財産分与は注意が必要!事前準備は入念に
スムーズに離婚を成立させるためには、さまざまな事前準備が必要です。衝動的に離婚を言い出したくなったときも、いったん頭を冷やしてください。
しっかりと根回しして準備を整えておけば、自分に有利な条件で離婚を成立させやすくなります。
中でも注意が必要なのは、財産分与の対象となる不動産についてです。お金のようにきっちり2つに分けることが難しいため、トラブルになりやすいでしょう。住宅ローンが残っている場合、話はさらに複雑になります。





