柏井 慶一さん(58歳)
VOL.172人も街も盛り上げる 千駄ヶ谷のシンボル的店
街の真ん中、
ブレないでいるだけだよ
朝
は7時から、夜は24時まで。いつも人が集まってる? 距離感がいいのかな。あんまり縮めないようにしてる。外の空気を吸いに出てきた会社員が、軽く天気の話でもして、なぜか元気になって帰ってく、みたいなさ。名前も働いてるところも聞かない。でも顔は覚えてるし、小さい子が来たら試飲用の紅茶に黙ってホイップをつけてやる。そういう距離感。
大きい会社に20年勤めながら「こんなんでいいのかな」と思ってた。成績さえあげれば寝ててもいい、そういう世界だったからさ。病院に行ったら看護師さんたちが一生懸命働いてる。それを見て、俺は何やってるんだ、血の汗が出るぐらい働かないとダメと思った。振り返ると20代、渋谷の紅茶屋で働いてた頃が一番苦しくて、だけど楽しかった。だから紅茶屋を開いたわけだ。
おいしい紅茶を飲んでもらいたい。けどちょっとだけ「幸せになってもらいたい」という気持ちのほうが上かな。うまく言えないけど、カップの渡し方1つ、こうじゃなきゃ、というのがある。言葉じゃないよ。俺はブレずに毎日、死ぬほど働くってだけ。それを見て、ああ俺もって、頑張るやつらがいるんだよな。
アントレ2017.冬号 「これが私を生かす道 ライフワークで食べていく!」より