「どうしたら商売繁盛するのか」。
多くの独立・起業予定の方が悩むところはやはりココ。繁盛するビジネスを漠然と考えても、なかなかいい具体的な案やイメージは思いつきません。そんな都合のいい必殺技なんてないか…と、起業に踏み込めない人は多いのではないでしょうか。
しかし、実は商売繁盛のコツは意外と簡単に見つかります。答えは業態での業績を因数分解し、掛け算と足し算で分けて考えること。あとは、その式の中で一番大切な部分を攻略するだけで、商売繁盛のヒントをつかむことができるのです。
本シリーズでは、そうした商売繁盛の秘訣を業種別に解説。第1回は、起業で人気のある「飲食業」。『アントレnet Magazine』編集部が総力を挙げて解説する飲食業攻略法をさっそくご覧ください!
商売繁盛の基本は「客単価×客数」の掛け算にあり!
飲食業でもっとも重要なのは、「売上」。独立・起業計画は、まず始めにこの「売上予測」を立てることから始めます。売上が見込めなければ、その飲食店は開業すべきでないからです。では具体的に、掛け算を用いた売上予測の立て方について考えていきましょう。
客単価について
売上は、シンプルに「客単価×客数」の掛け算で算出することができます。客単価は、業態ごとにほぼ決まっていて、居酒屋の場合だと中心価格帯の6倍。焼き鳥店ならば、焼き鳥1本当たりの中心価格帯の20倍といった目安があります。注意してほしいのは、客単価の目安となるそれら価格帯は、各地域での競合店を踏まえて決めること。きちんとしたリサーチが必要となりますね。
客数について
「客単価×客数」の客数は、「満席時人数×回転数」で算出できます。ここで気をつけたいのが「満席時人数」。満席時人数は総席数で考えてはいけません。たとえばピーク時でも、4人入れるボックス席に4人全員が埋まるわけではないからです。したがって、ボックス席に2、3人が座ることを考慮して、満席時人数は総席数の約70%と設定しましょう。「回転数」は営業時間と、お客さんの平均滞在時間から算出します。
売上予測は、こうして飲食店の現場の数字を下から積み上げるとともに、上からも予測しなければなりません。上からは、「マーケットサイズ×商圏人口×目標シェア」という掛け算で予測します。
具体的には
(1)外食産業に対して、国民1人当たり年間いくら支出しているのか。
(2)店舗に集客できる地域にどれくらいの人口があるのか。
(3)商圏内で自分の店がどれくらい支持されることを目指すか。
これら3つの数字の掛け算からも予測すれば売上予測の精度があがります。
【売上予測の立て方】
売上1=客単価×客数
・客単価=[居酒屋/中心価格帯×6倍]、[焼き鳥屋/中心価格帯×20倍]
・客数=満席時人数×回転数
売上2=マーケットサイズ×商圏人口×目標シェア
飲食店で儲けるなら「原価+固定費+変動費」の足し算技!
先にご紹介した「客単価×客数」の掛け算で売上予測を立て、売上が多くなりそうだとわかっても安心してはいけません。経費がかかりすぎては儲からないのが飲食業。そこで今度は、飲食店の経費について考えてみましょう。
飲食店できちんと儲けるならば「原価+固定費+変動費」の足し算が鍵。これでわかるのが経費です。
原価について
この足し算の1番目の「原価」。同じ飲食店でも、経営方針や競合店、他の経費要因との兼ね合いで原価は異なってきます。利益を出そうと食材費などの原価(食材費の品質)を下げてしまう方もいますが、食材費の品質は顧客の満足度に直結します。原価を設定する際には注意が必要ですね。
固定費について
足し算の2番目にある「固定費」は、売上高に関係なく発生する費用を指します。飲食店の場合、固定費の多くを占めるのは店舗の賃料。店舗賃料の目安は、先に「客単価×客数」で出した毎月の売上に対して繁華街で10%〜15%、ローサイドで5%〜7%です。大切なことは、このように売上に対して適正な賃料を算出し、その数字を参考に店舗物件を探すことです。
この店舗の立地は集客に大きく影響するので、好立地の物件を選びたいところ。でも初期費用は抑えたい…。そこで、オススメなのが「居抜き物件」です。
居抜き物件とは、前に入っていたテナントが利用していた造作や設備、什器等が残ったままの物件のことを指します。最初から設備や什器が揃っていれば、自分で少しの備品を揃えるだけでよいので、初期費用を大幅に抑えることができるのです。
変動費について
そして足し算の3番目にある「変動費」は、売上高に比例して発生する費用です。業界によって異なりますが飲食店の場合、人件費は変動費として考えることのが基本。客数が増える時期にアルバイトやパートを増やすため、発生する費用が一定ではなく、変化するからです。
また「従業員満足が顧客満足に繋がる」という考えから、バイト代を周囲の相場よりも高くする店舗があります。しかし、高いバイト代が当たり前になると効果は半減します。むやみに高給にするのではなく、他の方法で従業員満足度を上げることを考えたほうがよいでしょう。
こうして「原価+固定費+変動費」の足し算で経費を考え、売上予測で考えた「客単価×客数」「マーケットサイズ×商圏人口×目標シェア」の二つの掛け算を踏まえると、必要な投資額や毎月の経費、利益を割り出すことができます。
飲食店で繁盛できる確率はこうして高めていけるのです。漠然と考えていた時よりも、だいぶイメージは具体化してきたのではないでしょうか。
【予想利益の算出の仕方】
予想利益=売上[客単価×客数]−経費[原価+固定費+変動費]
五感を刺激して客数を、本物感で客単価をUP。驚きの繁盛店へ
売上や経費を予測したところで、それを実際の店舗に活かさないと意味がありません。さらに繁盛することを目指すには、売上の掛け算で出てきた「客数」と「客単価」を高める工夫が必要になってきます。その方法を紹介しましょう。
まず1つ目は「実演調理により五感を刺激すること」。例えば焼き鳥店を経営する場合、人目につく店の正面で焼き鳥を焼いて道行く人の足を止める作戦があります。においや音、色で五感が刺激され、通行人はついついお店に入ってしまうことに。「客数」はこうして高めていきます。
2つ目は「本物感をお客さまに与えること」です。その例が丸亀製麺。同店では、うどんを店内で製麺し、ゆでたてのうどんや揚げたての天ぷらを低価格で食べることができます。
こうしたゆでたてを提供することで、丸亀製麺の運営会社は神戸にありますが、本場讃岐発といった「本物感」を与えています。競合店では100円のものが、同店では3倍近くの値段で売れているのは商品に「本物感」があるから。こうして「客単価」を上げられるのです。
【売上UPのコツ】
「五感」を刺激して客数UP×「本物感」を演出して客単価UP!
まとめ
売上を予測できる掛け算「客単価×客数」や、経費を考えた経営をできる足し算「原価+固定費+変動費」を頭に入れて、きちんと儲けどころを押さえること。これが飲食店で成功するために必要な、最低限の準備です。
その上で、自分の中で「何を一番大切にするのか」を決めておくと、不利な状況に陥っても考えが大幅にぶれることなく飲食店を経営することができます。
例えば、一番大切にするものが厳選された食材と考えるならば、「原価」は減らさずほかの数字を減らして利益を確保する、といった判断ができるからです。
もちろん、状況を客観視しつつ「こだわり」と「柔軟」のバランスを考えて判断することが大切です。今回ご紹介した掛け算や足し算、そして絶対に譲れない一線、つまり理念を持って商売繁盛を目指し、起業を成功させましょう!